ネットの噂の真偽を専門医院に聞く、薄毛治療にはいくら必要なのか

   ニュースサイト「しらべぇ」で2018年8月5日、薄毛専門外来に通っているというインターネットユーザーの"体験談"を紹介する記事が公開された。ユーザーは、通院により改善はみられたものの、治療を怠ると効果が無くなり「永続的な投与が必要」という。治療費は月3万円で、仮に55年後を寿命とした場合、合計で2000万円もかかると嘆いた。

   本当なのだろうか? ネットでは薄毛治療をめぐる真偽不明の話は、ほかにも見かけた。そこで、「しらべぇ」の記事で紹介されているユーザーが実際に通院している病院は分からないが、薄毛治療を専門に行っている代表的な病院の一つである銀座総合美容クリニック(東京都港区)に話を聞いてみた。

画像はイメージ
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薄毛にはいくつかの種類がある

   ――そもそも薄毛にはどんな種類があるのでしょうか。

「髪の毛が薄くなる理由は(1)老化現象(2)糖尿病など内科的な疾患(3)皮膚の疾患(4)円形脱毛症(5)AGA(男性型脱毛症)――の大きく分けるとおおよそ5つくらいに分けられます。多くの薄毛治療専門クリニックでは、AGAをメインに治療しています」

   ――AGAのメカニズムを教えてください。

「男性ホルモンが悪玉の男性ホルモンに切り替わり、それが頭皮の細胞にある受容体と結びつくと、『ヘアサイクル』(髪が生え、成長し、抜けるという生え変わりの周期)が乱れて髪が薄くなっていきます。受容体はつむじや生え際に集中しているので薄くなる範囲は決まっています(注:AGAの進行度は外見の特徴によりいくつかの段階に分けられる)」

AGAの進行モデルの簡易版(銀座総合美容クリニック公式サイトより)

   ――具体的な治療法は。

「治療には、大きく分けて2種類の薬を使用します。脱毛の進行予防の薬と髪を生やすのを促す薬です。
「脱毛の進行予防の薬」は『フィナステリド』や『デュタステリド』で、男性ホルモンが悪玉ホルモンに変わる過程をブロックします。
「髪を生やすのを促す薬」はさらに2つに分かれ、1つは『ミノキシジル』。髪の成長を促す物質(成長因子)の分泌を促します。もう1つは、成長因子そのものです。頭部に直接、成長因子を投与します。
当院では、まず飲み薬を処方して様子を見ます。フィナステリドとミノキシジルを合わせての費用が1万8900円(税込)です。症状が進行していたり治療結果が芳しくなかったりする場合、成長因子を投与する施術を行います。こちらは1万9400円(同)です」

   ――治療の頻度は。

「飲み薬の処方は月1度。一方で成長因子投与を行う場合、最初は2週間に一度の通院で、その後は月1回が基本ですが、この施術は必須ではありません」

   ――ネットでうわさになっていますが、治療費2000万円というのはありえるのでしょうか?

「治療費の件ですが、薄毛治療は『保険外診療』なので価格設定は自由設定という前提があります。そのため、クリニックによって同じ薬を使用しても価格が異なる場合があります。ネットで言われているような月3万円の治療を55年続けるとしたら、かけ算をしていくとそのような金額になりますね。私どもとしてはあり得ませんが、計算上はそうした事例もあるのかもしれませんね。」

完治はないが、終わりはある

   ――「永続的な通院が必要」か否か、についてはどうでしょう。

「薬は服用後、一定の血中の濃度を超えると効果が表れ、その後体から排出されるので体内で効果を発揮するレベルに達しなくなります。これを防ぐために、服薬を続けて常に有効な血中の濃度を保たねばなりません。先に申した通り、治療薬の処方は月1回が原則ですから、効果を保ちながら治療を続けることが必要です。
通院6か月ほどで、『治療前』『治療後』の写真を比較すると毛量が明らかに増えた箇所が確認できるようになります。ですので、半年は治療の必要があります」

   ――半年で効果が実感できれば、治療は止めても問題ないのですか

「完全に止めると治療前の状態に戻ってしまうことも多いのです。半年経過後は、本人の満足するレベルまで毛量を増やし、後は薬の濃度を調整しながら量を減らすことで毛量をコントロールしていきます。
治療薬をストップして脱毛予防の薬だけでコントロールする人や、最終的に脱毛予防の薬を止めても毛量を維持できる人と、ケースはさまざまです。それはAGAが誰しも常に同じペースで進行するわけではないからです。
男性ホルモンの分泌は一生の中で一定ではありません。年齢を重ねれば分泌量は落ち着いていきます。そうなると薬の量を減らしても、AGAの進行スピードは遅くなっていくことも考えられます。」

   ――薄毛治療に完治はあるのでしょうか

「治療によって髪が生えそろった時に『二度とAGAにならない』のが完治だとすれば、現代の医療ではまだAGAは完治しません。一時的に状態をコントロールするという意味での治療といえます。
ただし治療の終わりはあります。本人が『もう大丈夫』と感じた時です。カウンセリングでは、『髪の毛が必要、という時期はずっと付き合っていきましょう、もういいとなったら、付き合う必要はないですよ』と、よく話しています。人生において髪の毛の価値観は、年齢や仕事をはじめ周囲の環境など様々な要因で変化していくものです。となれば、薄毛に関してより深刻に考える時期もあれば、悩みから自然と離れていくことが出来る時期もあるのです。」

   ――最後に治療を検討している人に向け、優良なクリニックを選ぶポイントを教えてください。

「AGA専門のクリニックであることや、クリニックとしてどのくらいの患者さんを診療しているかがポイントではないでしょうか。また、実際に治療前に数か所訪ねて『ここなら良いな』と思えるクリニックを選ぶのも重要です」

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