教えて!アナログゲームの達人(後) ゲームで仕事脳が鍛えられてコミュ力もあがるって本当ですか?
前回、アナログゲームコミュニティー「Anaguma」(アナグマ)主催メンバーで、広告プロデューサーの朝倉道宏氏と、Anagumaのオブザーバーである、あだちちひろ先生に、アナログゲームにはまったきっかけやアナログゲームがもたらす恋の効果(?)を伺いました。
※前編はこちら(教えて!アナログゲームの達人(前) ゲームで恋愛が始まって結婚できるって本当ですか?)
後編は、アナログゲームと仕事の関係についてです。今、アナログゲームを研修で使う企業が増えています。研修(=仕事中)にゲームできるなんて羨ましい話ですが、そこには深い理由があるようで......。
人に聞く人、説明書を読む人、他人に頼る人
研修やワークショップでアナログゲームを選ぶのは、とても責任を感じると話す、あだち先生
――あだち先生は企業でのアナログゲームを使った研修も開催されていますよね。具体的にはどのような内容ですか。
あだち アナログゲームで遊んで、社員同士を仲良くして欲しい、アイデア出しの起爆剤になるような楽しいものを、という要望が多いです。
アイスブレイクのように初対面の人同士の緊張感をほぐす効果がアナログゲームにはあります。逆に、社員同士の闘争心をあおるようなバチバチのゲームを選んでください、という依頼も。アナログゲームが持つ高いポテンシャルに企業が気付き始めているのを感じます。
単に遊んでもらうだけでなく、あえてルールを説明せずに、説明書を渡してルールを解読してみて、と投げることもあります。説明書を読む人、読まない人、他人に頼る人など、ゲームをプレイする時とはまた違った人となりがよく出ます。
――ゲームの内容によって効果が違うんですね。遊び方だけでなく、ゲームのチョイスはとても大切な気がしてきました。
あだち たとえば、普段まったく映画を見ない人に、3時間を超えるB級ホラー映画大作を紹介するとドン引きされますよね(笑)。それよりかは、たとえば、今ヒットしているディズニー映画を見たほうが楽しい。動画のクオリティーを見ましょうとか、ストーリーで泣き笑いしましょうとか。
アナログゲーム選びは映画のチョイスと同じと思ってくださるとわかりやすいのでは。ゲームのチョイスを間違えると、もう二度とゲームをやってもらえなくなるので、選ぶときはとても責任を感じます。
社内のコミュニケーションも円滑に
とても穏やかな物腰で話してくれた朝倉さんですが、アナログゲームやコミュニティー作りにかける強い気持ちを感じました
――J-CASTニュース会員はビジネスパーソンがたくさんいます。アナログゲームはビジネス面でも役立つのでしょうか。
朝倉 いちビジネスパーソンとして言わせてもらうと、めちゃくちゃ役に立ちます!
プログラマーやデザイナーの方は、パソコンに向かって仕事をしている時間が多いと思いますが、そうすると会社へのロイヤリティが上がらないじゃないですか。みんなで協力して目標を達成するチームビルディング系のゲームをすると、そのまま協力的な雰囲気になります。社内のコミュニケーションが円滑になる感じがありますね。
あだち先生もおっしゃっていますが、アナログゲームで遊ぶと社員の人柄が分かるというのが面白い。営業職は人狼系のコミュニケーションゲームが得意だし、クリエイターは言語系のゲームをすると本気になる。普段はおとなしい人が、反射神経を競うようなゲームをすると飛びぬけて上手だったり。この人は、こんなことが得意なんだと分かると、社内でまたひとつキャラクターが立ちますよね。
――広告のお仕事をなさっている朝倉さんから見た、アナログゲームの魅力とは?
朝倉 アナログゲームのカードやコマのデザインを見るだけで刺激を受けて、勉強になりますよ。世の中はデジタルにシフトしていますが、まだまだアナログな紙でクリエイターができることはあるんじゃないかと再認識します。
ここで、とてもかわいいコマのゲームを広げるあだち先生
あだち これはドイツの「Geisterwäldchen」(日本語版は「おばけのもり」)というゲームです。デザインと立体物がとてもいいでしょう? ドワーフのコマと、子どもたちのコマが磁石でくっつくようになっています。やっぱりデジタルだと味気ないじゃないですか。アナログゲームは解説書を読む必要がありますが、このゲームも見ての通り、文字がありません。どんな言語圏でも遊べるようなユニバーサルデザインになっています。
ドイツはアナログゲームがとても盛んで、毎年開かれる「Essen Spiel」(エッセン・シュピール)は、東京ドーム3個分くらいの広さの会場に2000タイトル以上のゲームが集まる祭典です。4日間で18万人が集まり、会場内で自由に「混ぜて!」と一緒に遊べて、購入もできるんです。
Anagumaのロゴは、株式会社ライトパブリシティのアートディレクターである鈴木奈々瀬氏がデザインしたもの。サイコロを持ったアナグマがとてもかわいい
アナログゲーム初心者にこそ来て欲しい
――最後に、今回のイベント、J-CASTニュース会員向け「アナログゲームサロン」にはどんな人に来て欲しいですか。
朝倉 アナログゲームをやったことがない初心者に来て欲しいですね。ゲームによってその場の雰囲気がどうなるかある程度予測できるのもアナログゲームのいいところ。以前、婚活イベントを企画している友人から、盛り上がるゲームはないかと頼まれて、あだち先生から教えてもらった『はぁって言うゲーム』を紹介しました。それが婚活イベントにぴったりで盛り上がったそうで、教えたほうもすごくうれしかった。こういうのって、ネットで調べてもたどりつかない情報じゃないですか。
今はエンターテイメントが飽和している状況だと思っているので、あえてアナログなゲームを「これ知ってる?」と、人に教えられるプレミアム感はありますよ。アナログゲームマスターのあだち先生が今回のイベントをコーディネートしてくれることは、とても大きい。ひとつでもふたつでも、アナログゲームを覚えて帰って欲しいですね。
あだち 一番伝えたいことは「すごいんですよ、アナログゲームって!」ということです(笑)。アナログゲームと聞いて、「やだな、苦手だな」と思う人に来て欲しい。絶対好きにさせますよ!
取材後はJ-CASTが制作したアナログゲーム、『ミダシショクニン』で遊んでもらいました!
(終わり)
※前編はこちら(教えて!アナログゲームの達人(前) ゲームで恋愛が始まって結婚できるって本当ですか?)
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朝倉 道宏(あさくら みちひろ)
株式会社ライトパブリシティ常務取締役執行役員。プロデューサー、メディアプロデューサー、クリエイティブディレクター。
イベント会社でのプランナーを経て、広告制作会社ライトパブリシティに入社。外食、食品、化粧品、化学会社など幅広い業種のクライアントを担当。従来のプロデューサー業務に加え、 2005年メディアプロデューサー、2015年クリエイティブディレクターを兼任。現在、複雑化していく広告界の中で、クライアントの課題に対して、幅広い視点とクリエイティブでコミュニケーションプランを実現している。
あだちちひろ先生
株式会社あだちのYEAH代表取締役、アナログゲームマスター。
留学中に海外のアナログゲームに興味を持つ。ボードゲーム専門店「すごろくや」でゲーム司会、進行の経験を積んだのち、世界中のゲームを紹介する「ゲームマスター」として活動を開始。ゲーム司会、オリジナルゲーム制作のプロデュース、社内研修、教育現場でのゲーム活用など、アナログゲームの幅広い可能性を探求・発信している。