貴乃花親方、「引退」の背景 もがき、あがき、闘い続けた日々
横綱白鵬が全勝優勝を飾った秋場所(2018年9月)が終わると、突然、貴乃花親方が引退を表明した。相撲人気を支え平成の大横綱といわれ、相撲界の改革に挑戦してきた親方に何があったのか。今回は本人が明かした半生の記を紹介し、問題の背景に迫る。また、昭和平成の名力士100人の素顔と記録、大相撲の基礎知識を解説した辞典など角界の裏表を案内する。
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15歳で入門、ひたすら走り続けた相撲道
『生きざま 私と相撲、激闘四十年のすべて』(著・貴乃花光司、ポプラ社、1512円)は、貴乃花親方(46)が自ら振り返った衝撃の自伝である。父は「角界のプリンス」と呼ばれた大関貴ノ花、伯父は45代横綱の初代若乃花、兄は66代横綱の3代若乃花という相撲一家に生まれた。15歳で入門、ひたすら相撲道を走り続けた。
「私は横綱になるという父の夢を果たすため、父の分け身として人生を歩んできた。(中略)私も四十歳、不惑の年を迎えた。『不惑』などという言葉が悪い冗談に思えるほど、もがき、あがき、闘い続ける日々を送っている」(本書より)。今回の引退表明を思わせるような一節かも知れない。
第1章「父の引退、そして相撲を始める」から「相撲に生涯を捧げる決意」「不撓不屈―雑草のように生きる」「不惜身命―横綱という栄光の光と影」「親方となる、そして父との別離」「相撲への恩返し」の6章。
69連勝の双葉山から白鵬、稀勢の里まで100列伝
あなたが一番好きな力士は? あるいは、最も強い力士は?――『昭和平成 大相撲名力士100列伝』(著・塩澤実信、北辰堂出版、2052円)は、戦前から現在までの名力士100人の記録と土俵上の美学、所作、姿など、その魅力を紹介する。
69連勝を打ち立てた双葉山、その70連勝を阻止した安藝ノ海、後にNHK中継の名解説者になった神風、プロレスに転向した東富士ら昭和の人気力士が並ぶ。
平成ではモンゴル出身の朝青龍、41回目の優勝を果たした白鵬、日本人力士として久し振りに横綱に昇進した稀勢の里――このほか、琴欧洲、栃ノ心、琴奨菊、ファンの多い遠藤らも登場している。
相撲独特の用語「イカを決める」とは
相撲には独特な用語がある。「ごっつあん」とか「タニマチ」とか、よく耳にするが、例えば「あごをかます」とは、どういう意味なのか。相手の頼みを冷たく断ることだ。「イカを決める」とは、勝負事や賭け事に勝ったまま勝ち逃げすることだそうだ。イカがスミを吐いて姿をくらますことに由来するという。こうした用語を知れば、相撲をより深く楽しめることができる。
『大相撲語辞典 相撲にまつわる言葉をイラストと豆知識でどすこいと読み解く』(著・福家聡子、監・木村銀治郎、誠文堂新光社、1620円)は、決まり手82手、歴史や道具、しきたり、所作など相撲にまつわる言葉や事柄をイラストとともにわかりやすく解説する。
第1部は基礎知識編(ざっくり相撲の歴史、年間スケジュール、本場所の1日、土俵、番付、決まり手など)、第2部は用語編(合口、相星、赤ちゃんだっこ、明荷など)。