北朝鮮はトランプ政権に勝てるか 首脳会談を前に疑問点を洗い出す
史上初の米朝首脳会談が6月12日(2018年)、シンガポールで開催される。朝鮮半島の非核化は実現するのか、北朝鮮は体制保証を勝ち取れるのか。大国と渡り合う北朝鮮の動きが世界中から注目されている。今回は会談を前に北朝鮮という国家、人民、核、ミサイル、拉致など実態と問題点をつぶさに明らかにする。
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「恐怖の独裁国家」のリアルな現実
「悪の枢軸にして恐怖の独裁国家」「何を考えているのか分からない不気味な国」――。北朝鮮にこんなイメージを持っている人が多いだろう。実態はどうなのか。『北朝鮮は「悪」じゃない』(著・鈴木衛士、幻冬舎、864円)は、今こそ知りたい北朝鮮の本当の姿を描く。
1章、2章は朝鮮半島の問題と北朝鮮の背景や国家のしくみを解説。第3章は「2代目金正日と3代目金正恩」の人物論。第4章は核・ミサイルの動向、トランプ政権の対応および中国の動きを分析。第5章は今後の展開と日本のとるべき戦略について語る。
著者の鈴木衛士さんは陸上自衛隊に2等陸士として入隊、2年後にいったん離隊したが、幹部候補生として航空自衛隊に再入隊し、約30年にわたり情報幹部として勤務、2015年に空将補で退官した。
脱北者が綴った99編の手記
美女応援団や整然としたパレードはテレビでよく見るが、テレビに現れない北朝鮮の人たちはどのような暮らしをしているのか。その疑問に答えたのが『北朝鮮人民の生活 脱北者の手記から読み解く実相』(著・伊藤亜人、弘文堂、5400円)。脱北者自らが綴った99編の手記を収録した。
実に様々な現実が浮かび上がる。「結婚」「職場の思想学習」「幼稚園」「忠誠と献納」「電力供給の実態」「苗床と作業」「都市のアパートの実情」「障害者がいると家族全員地方に追放」「暖房の苦労」「地方産業工場」「豆腐商売」「松茸採り」「飢えと盗み」――。
社会主義公式体制を維持するために、膨大な非公式経済によって支えられている実態が解明される。
北朝鮮での24年間の歳月
「煙草の火を貸してくれませんか」。恋人と語らう柏崎の浜辺で、声をかけてきた見知らぬ男。これが「拉致」の始まりだった。『拉致と決断』(著・蓮池薫、新潮社、1404円)は、拉致された北朝鮮での24年間の歳月を初めて綴った衝撃の手記である。
拉致、それは1978年7月31日だった。自由を奪われた生活、脱出への希望と挫折、自動小銃音の恐怖、飢えの知恵、拾い上げた1粒のトウモロコシ、戦慄した洗脳教育、子どもについた大きな嘘――。必死に生き抜いた迫真の記録である。
著者の蓮池薫さんは中央大学在学中に拉致され帰国後に復学・卒業し新潟大学大学院修了。現在は新潟産業大学准教授を務めながら執筆、翻訳に携わっている。『半島へ、ふたたび』で新潮ドキュメント賞を受賞。