関西発「ワンカルビ」が東京初進出 「焼肉食べ放題」の革命児、競争力の源泉は
関西を中心に展開する食べ放題の焼肉店「ワンカルビ」が2018年4月17日、関東1号店となる「ワンカルビ花小金井店」(東京都小平市)をオープンした。
同店のウリは「非効率の追求」。競合店とは逆を行く戦略で支持を集め、関西で65店舗、九州で10店舗出店する(4月1日現在)。焼肉チェーンがひしめく関東でも受け入れられるのか。
「肉の鮮度、サイドメニュー、接客、居心地」
門出となるオープン初日。西武新宿線「花小金井」駅から徒歩15分ほどの新店を訪れると、10組以上の列ができていた。172ある席はすべて埋まり、店内はスタッフの活気でにぎわう。
ワンカルビは家族客をメインターゲットに据え、郊外を中心に店を構える。大きな特徴は3つ。(1)チルド肉の店内カット(2)質の高い接客(3)居心地の良い店舗設計だ。
「料理、接客、居心地。飲食店の基本的な要素を徹底的に磨き続けてきました」
ワンカルビを運営する「ワン・ダイニング」髙橋淳社長はこう話す。
髙橋淳社長
食べ放題焼肉業態の多くは、セントラルキッチンで肉をカットし、冷凍した状態で各店舗に配送する仕組みが一般的だという。だが、ワンカルビは同じ手法を採らなかった。コストはかかるが、店舗ごとでチルド肉の加工をしている。
店舗でのカットシーン
「肉にとって一番重要なのは鮮度です。鮮度を重視するにはチルド肉でないといけません。セントラルキッチンからチルド肉を流通させるのは難しいため、取引先から各店舗に直接納入してもらっています」(髙橋社長)
料理へのこだわりは「肉」だけではない。サイドメニューにも重点を置く。
3580円(税別)の食べ放題コースは95品用意されているが、サイドメニューは「肉屋のボロネーゼパスタ」「じっくり煮込んだ焼肉屋のビーフカレー」「土鍋麻婆豆腐四川山椒の香り」など半数ちかくを占める。
肉はもちろん、前菜、麺類、ご飯ものと種類豊富
髙橋社長は、
「焼肉屋でこういったメニューってどうなの?と思うかもしれません(笑)。ですが、1品1品専門店に負けないクオリティーで提供しています」
と自信をのぞかせる。
アルバイトも「出張研修」で人材育成
「接客」にも力を入れる。
「サービスは『掛け算』だと言われています。来店から退店までの間に少しでもマイナスがあったらすべて否定されてしまいます。特にお客様との接点が多い『接客』は+αにもなればリスクにもなってしまいます」
そのためスタッフの人材育成には積極的な投資を惜しまない。花小金井店の場合、オープン2か月前から新人研修を進め、アルバイト数人は大阪で「出張研修」を受けさせた。
こうした姿勢が評価され、2013年には外食産業初の「日本経営品質賞」(大規模部門受賞)を獲得している。
2人客でも「6人席」に案内
最後は「居心地」だ。
記者はオープン初日、同僚と2人で店舗を訪れたが、案内された席に驚いた。2人にもかかわらず、6人掛けの半個室テーブルに座れたためだ。
席はすべて同様の造り。3世代で来店しても同じ卓で食事を楽しめるよう配慮されている。
座席
また、食べ放題業態に多い「セルフバイキング式」ではなく、ゆったりくつろげるよう「テーブルオーダー式」を採用している。
高コスト経営の秘けつとは?
以上、ワンカルビの特徴を紹介してきたが、ここで疑問が。なぜ3580円とリーズナブルな価格ながら、効率を追求しない「高コスト経営」を維持できるのか。
髙橋社長は「他のチェーン店さんに比べて1店舗当たりの売り上げが全然違うからです」 として「客数の多さ」を挙げる。
「食べ放題を始めた2006年から地道に店のクオリティーを上げ続けてきた結果、リピート客がじわじわ増えてきました。口コミ効果もあり、おかげさまで土日はもちろん、平日も繁盛する店舗を多く生み出せました」
今後は花小金井店を皮切りに「十字出店戦略」を展開していくという。東の三鷹(東京)、西の八王子(東京)、南の藤沢(神奈川)、北の所沢(埼玉)の十字のラインの地域に絞って出店攻勢をかける。