「遺伝子組換えでないものを分別」ってどういうこと? 表示見直し検討も分かりにくさが心配

   しょうゆや納豆、豆腐、油類を購入した際に原材料表示の欄を見ると、「遺伝子組換えでない」といった表示を見かけることがある。「ない」と表示するからには、使用率は0%――と考えてしまうが、実は5%以下は混入が認められていることをご存知だろうか。

   5%を「ない」と言い切るのはやや疑問も残る。実際、消費者団体などからは「不適切では」との声が挙がり、2017年から消費者庁で表示見直しの検討会が行われている。

含まれているのか含まれていないのか…?(消費者庁「【資料】遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書案(たたき台)」より)
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「遺伝子組換えでない」実は5%混入までOK

   そもそも現行の遺伝子組換え表示はどのようなルールになっているのだろうか。消費者庁の公式サイトで公開されている「食品表示に関する共通Q&A(第3集:遺伝子組換え食品に関する表示について)」によると、表示対象となっているのは大豆やトウモロコシなど8種類の農作物とそれらを原料とする33品の加工食品だ。

   表示対象になっている作物で、遺伝子組換え作物を主原料に使っている可能性があれば「遺伝子組換え」あるいは「遺伝子組換え不分別」と表示をしなければいけない。

   一方、遺伝子組換えでない原料を区別して使っている証明書があって、遺伝子組換え原料が5%以下の混入なら「遺伝子組換えでない」と任意で表示してもよいことになっている。これは現在日本に多量の遺伝子組換え作物が輸入されており、分別をしても0%にすることは困難なので、やむを得ず混じってしまう「意図せざる混入」をある程度認めるという意図に基づいている。5%という数値は生産・流通の過程でどの程度混入する可能性があるか試算して導き出したものだ。

   だが消費者庁の調査で、消費者のほとんどが「遺伝子組換えでない」は混入率0%だと思い込んでいるという実態が報告されており、改善が必要なのは確かだ。

   最新の検討会は2018年1月31日に開催され、その際の資料は消費者庁のサイト上で確認できる。

   現在提案されている案を見ると、「遺伝子組換えでない(任意表示)」表示は限りなく0%(検出限界・α%)に近い数値のものとされている。しかし、それを上回った場合の表示に関して、検出限界より多いが5%以下のものについては中間の表示を認めるべきとの案も出ているのだ。どういうことだろうか。

   検討会後の毎日新聞や朝日新聞、日本農業新聞などの報道を見ると、「遺伝子組換えでないものを分別」といった「α%を超えるが5%以下」のための表示を認めるという「折衷案」だと説明されている。

消費者庁の見解を求めて取材すると...

   折衷案では表示の種類が増えるばかりで、ますます消費者には分かりにくくなるように思える。「遺伝子組換えでないものを分別」と書かれても、直感的になんのことか理解できないだろう。

   農学系の研究者らで構成される「日本農学アカデミー」も2月14日付で、公式サイト上に「遺伝子組換え食品表示改訂に関する新たな要望書」を公開し、「遺伝子組換えでないものを分別」という表示では問題解決につながらないとし、その場合は「遺伝子組換えの混入は5%未満(※原文ママ)」と明記するよう提案している。

   ではなぜ折衷案が出たのかというと、消費者庁の資料によれば「5%以下の混入は誤解を招くとは言えない」「混入率が厳しくなると事業者の対応が難しくなる」「混入を恐れて遺伝子組換え作物を輸入できなくなり原料の安定供給が難しくなる」などが挙げられている。

   消費者庁としてはどう考えているのか、検討会に関わっている消費者庁食品表示企画課にJ-CASTトレンドが取材をしたところ、「さまざまな案が出ている中で検討を重ねている段階で、(最終報告書が提出される予定の)3月までは消費者庁としてコメントはできない」としたうえで、こう続けた。

「現行の表示が誤解を招くのではないかという観点から行われている検討会ですので、どのような表示にすることが適切なのか、検討の過程でさまざまなご意見を踏まえた案が提案されています。折衷案もそのひとつということです」

   また同課は、組換え表示はあくまでも消費者への情報提供のひとつでしかないとの考えだ。取材に答えた担当者は、

「国内で流通する遺伝子組換え作物は国の審査で安全性が確認されたものです。『遺伝子組換えでない』『遺伝子組換え』といった表示は食品の安全性やリスクを訴えるものではなく、単なる原材料情報のひとつに過ぎず、それ以上の意味はありません」

    と話した。折衷案で表示がさらに分かりにくくなるのか、気になる表示の行方。次回検討会は2月16日に開催される予定だ。

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