3代目のメディアへ 台湾発ライブ配信アプリ「17 Live」、狙うは世界
「夢を叶えられる場所にしたい」。アジアを席巻する台湾発のライブ配信アプリ「17 Live」の創業者、Jeffrey Huang氏はかつて、そう語った。
「17 Live」は今まさに、次のステージに進もうとしている。俳優や歌手、タレント、モデルなどの「夢」見る若者たちがファンと交流するプラットフォームから、「メディア」へーー。J-CASTトレンド編集部は台湾でライブ配信市場の最前線を取材した。
芸能人が稼げるシステムづくり
「17 Live」(以下「17」)は2015年6月、台湾でサービスをスタート。台湾と日本、韓国、香港、タイ、ベトナム、マレーシア、シンガポール、インドネシアの計9か国でサービスを提供しており、ユーザー登録者数は世界中で4000万を突破している。
ダウンロード数が1000万を超えるまでに要した期間は244日で、これはインスタグラムや、ツイッターより短い。
「ここまで大きくなるとは想像していなかった」。「17」を運営するM17 Entertainmentの創業者、Jeffrey Huang氏(以下Jeff氏)は2017年12月16日のJ-CASTトレンド編集部の取材にそう話した。
そもそも、「17」が誕生したきっかけは、彼が台湾で有名な芸能人だったからだ。YouTubeやフェイスブックで自身の作品を公開して有名になっても、儲かるのはほんの一握りーー。台湾の芸能界ではそんな状態が20年くらい続いており、Jeff氏は芸能人がきちんと稼げて、ファンと遊べるシステムの構築を目指した。
「17」では、ライブ配信者(17ライバー)が配信し、視聴者(ファン)が「いいね」やコメント、「Poke」(「つっつく」の意)で反応する。17ライバーはその上でファンの名前を読み上げる......といった具合に、双方のコミュニケーションがスマホ1つで成立する。
ファンは課金して17ライバーに「ギフト」というアイテムをプレゼントする(日本では120円~)。多くの17ライバーはM17 Entertainment 傘下の17 Mediaか、他の芸能事務所に所属しており、ファンが「ギフト」を贈れば贈るほど、17ライバーの懐もその分だけ潤うのだ。
さらに、17 Mediaは17ライバーたちに自社広告への出演をオファー。街のビルには、17 Mediaの広告が一面を飾り、トップライバーたちはいつかネットの外へ飛び出す日が来ることを夢見て、自らの手で自らの可能性を広げる。
その夜、「シンデレラ」が誕生した
2017年12月16日、台北のランドマーク「台北101」にほど近い高層ビル。台湾のトップライバー300人が「17」のクリスマスオフラインイベントで、ここに集結した。事前の予選ラウンドで多くのギフトを獲得した、選ばれし者たちだ。
きらびやかなドレスに身を包みレッドカーペットを練り歩くさまは、まるでハリウッドにでもいるかのようだ。しかしパーティー会場では、左隣の17ライバーと交流するよりまず、スマホ画面の向こうにいる世界中のファンと会話する。トップ300人によるライブ配信だ。
イベントといっても今1番輝くライバーを決める「戦いの場」だ。チーム対抗の「団体戦」と「個人戦」でポイントを競う。ライブ配信で獲得した「ギフト」こそが、ポイント数だ。団体戦で勝ち抜くと、「ギフト」やボーナスポイントがもらえ、これを加えた最終的な個人のポイント数で勝者を決める。
「もちろん1位になりたいけど、皆さん強いので頑張らないと。特に(配信の内容は)考えていないが、ファンの皆さんにこの場所や、たくさんの綺麗な女性を見て楽しんでもらいたい」
見事1位の座に輝いた女性17ライバー、「小金魚韓羽」さんはイベント開始前、そう語っていた。
「こういう雰囲気のパーティーは初めて。皆さんお姫様、王子様みたいで興奮している」
団体戦で獲得したボーナスポイントで、3位から1位へ繰り上がって逆転優勝。景品として、350万台湾ドル(当時のレートで約1295万円)相当のフランスの城を手に入れた。まさか本当の意味で「シンデレラ」になるとは思いもしなかったのではないか。
クリスマスイベントは日本でも、2017年12月20日19時から東京都内で行われる(「17 Liveクリスマスパーティー!~Topライバー100名!17ホワイトクリスマスに夢を持ち合わせよ!~」)。誰が新たなスターになるのか、こちらも目が離せない。
「17」のこれから クイズ、トークショー、そして通販番組
M17 EntertainmentのShang Koo CFO(最高財務責任者)は、「17」の強みは芸能界に幅広い人脈をもつJeff氏の影響力だと説明。「Jeff氏は17ライバーと視聴者のコミュニケーションを大切にしており、双方ともに楽しめるイベントを重視している」と話す。
「17は他のアプリより多くの17ライバー、芸能人を抱えており、容姿端麗な女性ライバーの数も多い。テレビと同じで、視聴者はどれを見るか迷うだろうが、17は内容、ライバーとも一番優れているから選んでもらえる」
Shang氏によると、Jeff氏は、テレビと映画がメディアの「1代目」、YouTubeやNetflixなどの動画が「2代目」、「17」などのライブ配信は「3代目」にあたると考えている。1代目で不可能だった配信者と視聴者の交流は、3代目で実現した。「17」はこの先、どんなメディア像を思い描くのか。
「17は台湾で、ライブチャットのほかにトークショーの番組「17TV」やクイズの番組「17Q」を放送しており、これから通販番組やドラマも始める。17の通販番組ではテレビと違い、視聴者とのコミュニケーションを取れる」(Shang氏)
日本のライブ配信アプリ市場をめぐっても、「ライバルはまだ多くありません」とし、
「17は台湾のトップですから、この技術をもってすれば、日本でも通用すると信じている。台湾と同じような(トークショーのような)番組を作りたい」
と話す。
Jeff氏は
「できる限り、世界で1番のシステムを作りたい」
と語っている。