スマホ画面みたいに使える「未来窓」 チャットで会話、自動で換気...記者が体験してきた!
いつもの「窓」がスマホ代わりになったら? 「窓」とおしゃべりできたら――?
窓のイメージが変わるかもしれない新製品が完成した。製作したのは、YKKグループの中核企業で窓やサッシを手がけるYKK AP。同社ショールーム新宿(東京都渋谷区)にて、IoTに対応した未来窓のプロトタイプ製品「Window with Intelligence」(以下、WWI)を2017年7月1日から一般公開する。
オフの状態だとガラスは透明
WWIは、YKK APとクリエイティブラボPARTY(東京都渋谷区)、ゼンリンデータコムの社内ベンチャーWill Smart(東京都港区)の協力によって誕生した。
タッチセンサー付き透明有機ELの両面を強化ガラスではさみ込んだ3層構造の「ガラス」と、樹脂製の「窓フレーム」を組み合わせることで、窓の基本性能を保ちつつ、スマホやタブレット端末のディスプレイのように機能する。サイズは縦1596×横1062(mm)。
WWIは、「Home Connect」(家電連携機能)、「Video Chat」(チャット機能)、「Air Conditioning」(換気機能)、「Weahter」(天気機能)、「Drawing」(メモ機能)、「Life Log」(ライフログ機能)、「Mirroring」(ミラーリング機能)の7つの基本機能を備える。17年度中に国内外のメーカーから発売予定の「AIスピーカー」との連携を想定しており、ユーザーの音声指示に反応させることも可能となる。
「Home Connect」は、AIスピーカーの音声アシストや屋内のスマート家電とインターネットで連携することで、窓の開閉をはじめ、エアコンや照明など各種家電の操作を行える。
「Video Chat」は、窓を通じてリアルタイムコミュニケーションができる機能。チャット相手の姿が大きく映し出されるので、お互いを身近に感じながらやり取りできる。
部屋の空気環境を測定して、そのレベルを色で知らせる「Air Conditioning」。汚れを感知したときは自動に開閉して換気を行う。タイマー設定のほか、AIスピーカーの音声アシストを設定すると、声をかけるだけで窓を開閉させることも可能。
窓から見える空模様で1日の天気を判断する人は多いはず。さらに天気情報を表示してくれるのが「Weather」。屋外の気象情報やネットのデータを取得して、窓に表示する。1日・1週間の天気予報だけでなく、紫外線や花粉情報も網羅。天候に合わせて窓を自動開閉する機能も備える。
このほか窓にバーチャルな付箋に手書きメモを残せる「Drawing」、窓が部屋の中を定期的に撮影し、画像をアルバムのようにストックする「Life Log」、窓とスマホがペアリング(同期)して画像を表示する「Mirroring」といった機能を搭載する。
記者Iも実物を触ってみた。スマホ画面がそのまんま大きくなった印象で、反応も悪くなく、操作に戸惑うことはほとんどない。ガラスの面積とAIスピーカーから流れる音が大きく、老若男女ストレスなく使えそうだ。ただし窓ガラスの向こうは外なので、環境によっては周囲に余計な音が漏れないか少々気になった。
使用時は屋外から遮光した方が何かと使いやすそう。また室内の光も視聴に影響するので、照明器具の配置は事前にシミュレーションすべきだろう。
現時点では人の声によって起動する機能はないとのことだが、住人のボイスを事前に登録しておき、その音声だけに反応するような仕組みが備わって入れば、セキュリティ上安心だと思った。
ネックは価格か
一般公開に先立って開催されたメディア向け発表会では、YKK APの東克紀事業開発部長が登壇し、WWI開発の目的を次のように語った。
「窓は住む環境を左右する重要なパーツ。しかし家を建てる際はキッチンやトイレと比べると優先順位は非常に低い。もっと窓を意識してほしい、窓の楽しさに気づいてほしい。そんな思いからこのプロジェクトはスタートした」
実用化は3年後を目指す。有機ELパネルの価格は「100万円を超えない範囲」で、窓フレームを含めた価格は非公表。最初は法人向けに展開し、家庭向けはその後になる見通しだ。
YKK APショールーム新宿はJR新宿駅新南改札より徒歩3分。開館時間は10時~17時で、休館日は毎週水曜(祝日の場合は開館)と夏季休暇、年末年始。予約なしでも見学可能だが、アドバイザーの案内を希望する場合は事前予約が望ましい。詳細は公式サイトまで。