奇書から生まれた「むし」が九博を席巻中 肺積、鬼胎...これなーんだ?
肺積(はいしゃく)、脾の聚(ひのじゅ)、悪虫(あくちゅう)――。
これらは戦国時代に著された鍼術の秘伝書『針聞書(はりききがき)』に出てくる「むし」の名前だ。「むし」と言っても蚊や蜂ではない。「はらのむし」だ。
人気の「はらのむし」は?
『針聞書』には、63種の「はらのむし」が記載されていて、これら一匹一匹が病気を表している。
たとえば、「肺積は、いい匂いでもいやな臭いでも嫌うのに、生臭い悪臭だけは好むようになり、辛い味を好み、いつも悲しみにくれている。(肺積のような)人物(辛党で生臭さ好き、悲観的で色白)は、肺をわずらっているのである――」
と、こんな具合だ。
この『針聞書』を開館当初から展示していたのが、「九州国立博物館」(福岡県太宰府市)だ。今にも動き出しそうでユーモラスな表情を浮かべる「はらのむし」は、公開後すぐに人気者になった。
本物の『針聞書』は常時展示されているわけではないが、同博物館内にある、体験型展示室「あじっぱ」(無料)には「はらのむし」を紹介するコーナーがあり、2017年3月7日~4月7日には、第4回「はらのむしグランプリ」の人気投票が行われ、577票が集まった。
最新ベスト3は、3位「蟯虫(ぎょうちゅう)」、2位「鬼胎(きたい)」、1位「肺虫(はいむし)」というランキング。現在、「あじっぱ」で、1位に輝いた「肺虫」を紹介している。
そして「はらのむし」人気は、展示以外にも広がりをみせている。
人気の「はらのむし」4種をモチーフに、独自の歌詞・楽曲・振付をした九博オリジナルの公式ソング「はらのむし体操」動画は、ショートバージョン、フルバーション合わせ約1万回再生を記録(6月13日現在)。昨年度は熊本地震復興応援イベントでくまモンが踊ったという。
ミュージアムでの人気商品ももちろん「はらのむし」グッズ。「はらのむしフィギア」(540円)、「はらのむしおはじき」(648円)が、売れ筋だ。
中でも、はらのむし63種がカラフルな画と解説で紹介された書籍「九州博物館蔵『針聞書』 虫の知らせ」(1200円+税)は、定番の本。これ1冊で「はらのむしマスター」になれそうな充実っぷりだ。
【衝撃映像】彼女の目、鼻、耳、口の穴という穴から――
「ユーモラス」「かわいい」「癒される」といった感想の多かった「はらのむし」たちだが、4月28日から九博が公開している夜間開館PR動画は一転、かなり衝撃的だ。
動画は約30秒、太宰府に遊びに来た女子大生を彼氏が動画で撮影しているという微笑ましいストーリーなのだが、動画後半、「もうすぐ九博だよ!」と、前を歩いていた彼女がいきなり失神。彼氏が駆け寄ると、彼女の目、鼻、耳、口の穴という穴から「はらのむし」が無数に飛び出してくる――、という内容だ。
とことんリアリティを追求した映像は、苦手な人には少々キツイかもしれない。公式サイトにも、「【閲覧注意】後半は衝撃的な映像が流れます」と、大きく注意喚起が出ている。
記者も観てみたが、何回か見ると「はらのむし」一匹一匹はやっぱりどこかユーモラスでくすっとくる。
見れば見るほどクセになる「はらのむし」。九州に旅行の際は、九博に立ち寄ってみてはいかがだろう。
詳細は、公式サイトから。