「のどが痛い...風邪かな?」 中国伝統医学の視点でみたオススメの漢方薬とは
国立感染症研究所が毎週発表している「インフルエンザ流行レベルマップ」の最新情報によると、2016年11月7日から13日の週で、群馬県と北海道の一部地域で流行開始の目安を超えたという。日本列島は朝晩が肌寒くなり、感染症の流行に気をつけなくてはいけない季節になってきた。
人間の病気で最も多いのは風邪。単独の病気というより複数の症状が合併した総称だ。西洋医学的な治療では、解熱鎮痛剤を中心に複数の症状に対応した薬を併用するのが一般的。
「風邪のひきはじめかな?」と感じたとき、副作用が少ないとされる漢方薬を飲んで、対応を検討する人もいるだろう。風邪に効く漢方薬の定番といえば「葛根湯(かっこんとう)」が有名だ。ところが中医師――中国の伝統医学である中医学の専門医である路京華(ろ きょうか)さんによれば、中国では「銀翹散(ぎんぎょうさん)」が「のど」の症状に効く薬として広く飲まれているという。
日本が鎖国していた時期に中国で開発された「銀翹散」
「トレンド総研」が2016年10月31日にリリースした「ビジネスシーンの『冬のかぜ対策』に関するレポート」に、路さんは次のようなコメントを寄せている。
「漢方の考え方では風邪には2種類あります。1つは『風寒感冒(ふうかんかんぼう)』と呼ばれるもの。これは気温の下降により皮膚の毛穴がとじ、体温調節がうまくできず、体の熱が外に出せないことで発症します。寒気が出て体がガタガタと震え、節々の痛みや首筋のこわばりなどの症状が出てくることが特徴です。『外側から内側へ』進行していく風邪といえるでしょう」
「葛根湯は『風寒感冒』の症状におすすめできる薬です。なぜなら葛根湯は体を温め、汗を出す作用が働き、血流・血行を良くすることで『風寒感冒』の症状を和らげることができるからです」
葛根湯は中国医学の古典「傷寒論(しょうかんろん)」に登場する古い薬。ところが「傷寒論」に基づく薬では対応できない症状が増えてきたことから、1800年頃に「温病条弁(うんびょうじょうべん)」という新たな体系書が誕生する。
路さんの挙げる「銀翹散」は、のどの症状に対応できる生薬として「温病条弁」に載っている。当時の日本は蘭学(オランダ医学)の影響が強まりつつあった時期で、「温病条弁」はあまり広まることなく現在に至る。
「もう1つ(の風邪)は、『風熱感冒(ふうねつかんぼう)』と呼ばれるもの。これは、菌やウイルスが鼻、のどの粘膜から入ることで発症します。炎症反応が出やすく、のどが腫れ、発熱が強く起こり、鼻やのどから気管支へと『上部から下部へ』進行していくのが特徴です」
「銀翹散は日本ではなじみがないかと思いますが、中国ではインフルエンザの際や、家庭の常備薬として子どもから大人まで、のどの痛みをともなう『かぜのひきはじめ』によく飲まれている薬です。金銀花(きんぎんか)や連翹(れんぎょう)をはじめとする10種類の生薬が、抗菌・抗ウイルス作用・抗炎症作用に効果を発揮します」 「つらいのどの症状には銀翹散がオススメといえるでしょう。最近では飲みやすいドリンクタイプの商品も発売されています」(路さん)
路さんがコメントを寄せたレポートには、20~40代の男女500人を対象に実施した、アンケート調査の結果が掲載されている。「かぜのひきはじめ」の状態でつらいと思う症状の1位が「のどのいたみ」の77%で、2位が「せき」の51%だった。
また具体的な「のどのかぜ」対策を行っている人は55%にとどまっていることも判明した。具体的な対策を行っている人に対して、どんなことをしているか複数回答で尋ねたところ、1位が「早めに薬を飲む」(65%)、2位が「マスクをする」(60%)、3位が「うがいをする」(58%)と続いた。
年末年始は疲労がたまりやすい。病気を治そうと薬を飲んだところ、含有成分の効果で眠気が誘発される場合もある。市販薬を選ぶ場合は、日常生活に支障が生じない製品を選びたいもの。