「大当たり!スパイ盗聴器」「見本以外の物も出るよ!」 カオス過ぎるレトロガチャ、今やってみると...
「カプセルトイ」は日本特有の文化として、日々進化を遂げている。特に最近は一大ブームが起きており、大人向けのハイクオリティな商品や、インバウンド需要を狙った高価格帯の商品、マニアも唸るキャラグッズなど各社趣向を凝らした商品が毎日のようにリリースされている。
そんなハイクオリティなカプセルトイが業界を席巻する中、先日東京四ツ谷界隈で時代に取り残された超レトロな商品を見つけた。
白ちゃけたPOPに時代を感じる
「スパイ盗聴器」。
POPからして地雷臭がするこの感じ。まさか都会の真ん中にこんな時代錯誤なカプセルトイが生き残っていたとは。早速回してみた。
かつて至る場所にあった「闇鍋式」のガチャ
一昔前、カプセルトイではなく「ガチャガチャ」という愛称が一般的だった頃、そのラインナップはTHE・子ども向けの玩具がほとんどだった。カプセルに詰まっていたオモチャも、海のモノとも山のモノともしれないカオスなものが多く、チャチで雑多で謎の商品が街中に溢れかえっていた。
昔のガチャガチャってこんな感じ
このスパイ盗聴器はカオスなガチャガチャの代表例で、POPに
「大当たり!見本以外の物も出るよ!!」
とあるように、あらゆる商品がまぜこぜになったいわゆる「闇鍋式」のベンダーマシンだ。ただ、「大当たり」の盗聴器はごくわずかで、中身の大半はガラクタまがいの商品が入っている場合が多い。この手のガチャガチャの特徴として、大当たりの商品はたいていマシンの側面、つまり外から見える位置に積まれており、一見中にたくさん当たりが入っているように見える細工が施されている。子どもたちはそんな大人の思惑を知る由もなく、何度ガラクタをつかまされても、いつか出てくるかもしれない大当たりを夢見て大量の100円玉を溶かしてしまう子が続出したのだ。子どもたちの心をくすぐるスパイ道具「盗聴器」をエサに、型落ちの商品を消費するための知恵だったのだろう。
正体不明のしょっぱいオモチャたち
四ツ谷の街中でこのマシンを見つけた時、記者の脳裏に幼少期の苦い思い出がフラッシュバックした。値段は1回100円。300円以上のカプセルトイが珍しくないこのご時世ではまず成立しない商品だろう。
早速、5回連続で引いてみた。持ち帰って並べてみると、まずカプセルの種類からしてバラバラ。カプセルから透ける中身をちらりと見た時点で、すでに残念クジ臭がプンプンする。写真右端のカプセルだけ中身が見えないが、振るとカラカラと乾いた音がするので当たりの可能性は絶望的だろう。
まず出てきたのは、謎のクリスタルキーホルダー2種。ダイヤモンドカットのような加工が施されたプラスチックのボールに、キーホルダーがついただけの雑な商品だ。ボールの底には何やらシールが貼ってあり、反対側のレンズ状の窓から中を覗くと、イラストが浮かび上がる仕掛けになっている。
味気ないキーホルダー
中を覗くと、一つには三人組の男が描かれており、「だんごや三人衆」という文字が見える。もう一方には顔の長い女の子が描かれており「さくらもちや三人娘」とある。おそらく、20世紀が変わる直前に一世を風靡したあの和菓子三兄弟を意識したパチもん商品だろう。作られた年代が推察できる考古学的なガラクタと言える。
春になった花見、秋になったら月見をしてそうな奴ら
続いてこちら。外見は消化器を模したオモチャのようだが、「MADE IN CHINA」という刻印以外に何の手がかりもない。突き出した部分はバネ式でプッシュすることができ、ここから正体の予想がついた。水をためたコップの中で何回かボタンをプッシュすると、思った通り内側に水が充填され、水から出してもうワンプッシュするとか細い水流が噴出孔(?)から飛び出した。水鉄砲である。
なんか外国の卵型チョコに入ってそうな...
ただ、水を入れるためのフタなどはなく、あくまでボタンのポンプを使わないとリロードできない。そして、ボタンをプッシュすると同時に水も外に出てしまうので、いつまでたっても満タンにならないという無限階段のような矛盾をはらんだ代物だ。大変遊びにくく、かつ盛り上がりに欠ける。世の中にこんなにしょっぱい水鉄砲があったとは。
最もカオスな一品は、不気味な絵柄の缶バッジ
もう一つは謎のキャラクターが描かれたプラスチックのメンコのようなもの。裏返すとQRコードがついており、スマホで読み取ると「妖怪ウォッチメダランド」というページにとんだ。同シリーズの関連玩具なのだろう。突如現れた最新のキャラグッズに、ガチャガチャマシンの内部は時間まで交錯した四次元空間なのではないかという気がしてくる。いずれにせよ、使い方も遊び方も分からないので、記者にとってはガラクタの持ち腐れである。
突如現れたヤングなキャラグッズ
最後の大穴、真っ黒で中が見えないカプセルからは、ダントツで謎の商品が出てきた。小さな缶バッジで、そこに描かれている絵柄が大変不気味なのだ。夜の森に佇む教会のような建物の前に、背の高い男と金髪の少女が立っている。その周囲には十字架に磔にされた女性や、手を縛って木から吊り下げられた女性、棺桶のようなものに閉じ込められた女性など不気味なイラストが描かれている。怖い怖い怖い。なんだこれは。呪いの缶バッジか。えんがちょえんがちょ。
不気味な缶バッジ
うーん。5つ全て、もれなくガラクタだった。されど一つ一つに物語を感じる、味わい深いガラクタだった。かつてはお小遣いをはたいて掴まされたガラクタに意気消沈したものだが、今やってみるとツッコミどころが満載で実に楽しいガチャガチャだった。
そもそもプライバシーやセキュリティーに何かとうるさい現代社会を生きる子どもたちに、「盗聴器!」と堂々と銘打った商品が手の届く場所に溢れていた時代があったなど信じられるだろうか。ほぼ絶滅しかけている、古き良き(?)日本の一風景を見た気がした。