リオ五輪ささえた「底力」が命題 ヴィラ=ロボス「ブラジル風バッハ」
リオデジャネイロ・オリンピックが終わりました。南米初のオリンピックとして、そのラテン気質から大会の運営や治安に不安がささやかれた大会でしたが、結果として大成功となり、数々の感動のシーンが生まれました。日本選手団も大活躍でしたね。
今日は、そんな開催国、ブラジルを代表する作曲家、エイトル・ヴィラ=ロボスをとりあげます。
リオに生まれパリで学ぶ
ヴィラ=ロボスは、1887年、まさに今回の開催地リオ・デ・ジャ・ネイロの生まれ、チェロとピアノを弾き、音楽院にも通いましたが、先生と衝突し、たびたび放校になるという異端の作曲家でした。大言壮語の癖があるために、どこまでホントかわからない自伝を残した、ちょっとアバウトなところもブラジル的な作曲家です。若いころは、映画館でチェロを弾いていたりしましたが、ヨーロッパからブラジルにやってくる音楽家、とくにピアニストのアルトゥール・ルービンシュタインなどに認められて、パリへ留学して勉強します。
そんな彼の、代表作、いやライフワークといってもいいのが、「ブラジル風バッハ」という一連の組曲です。音楽の父、バッハに祖国ブラジルの名前をくっつけてしまうのが、いかにも自信家の彼らしいところですが、常に一貫して自分の音楽に自信を持っていたヴィラ=ロボスにとって、「祖国ブラジル」とは何か、というのが常に大きな命題でした。そのため、都会人であったにもかかわらず、ブラジル奥地、アマゾンまで足を運んで、民族音楽の収集をしたのです。それらの素材を、バッハが使ったような音楽の技法を使ってまとめ上げ、バロック時代に特徴的な「組曲」というスタイルに仕上げたのが、全9曲の組曲からなる「ブラジル風バッハ」なのです。
今もブラジル・クラシック音楽の英雄
組曲第2番の4曲目には、「トッカータ:カイピラの小さな汽車」という題名がつけられています。室内オーケストラで演奏されるこの曲は、音で汽車の動きを描写したものとなっています。オネゲルの「パシフィック231」を意識しています。小さな汽車、と書かれていますが、圧倒的なヴィラ=ロボス・サウンドは、ブラジルの大地と力強さを感じさせます。小さいことにはこだわらず、巨大な力を発揮するブラジルという大国の底力を感じさせます。オリンピックを思い返しながら、ブラジルの力を感じるのに最適な曲です。
ブラジルという巨大な国は、時々、巨大な才能を生みます。リオの音楽院の院長も務めたヴィラ=ロボスは、今もブラジル・クラシック音楽の英雄です。