中田英寿が"世界初"の「日本酒セラー」作りに挑む 250を超える酒蔵訪問で着想
サッカー元日本代表の中田英寿さん(38)がワインセラーならぬ日本酒セラーを作るという"世界初"のプロジェクトを進めている。日本酒を最適な状態で保管することで品質を劣化させずに保てるという、ありそうでなかった製品開発の取り組みだ。
「モノづくりニッポン e仕事×ReVALUE NIPPON」という企画の一環で酒蔵やプロダクトデザイナーと協力して製作を進めており、2016年1月13日に行われた企画発表会では中田さん本人がプロジェクトのきっかけと想いを語った。
日本酒の保管方法は日本でもあまり知られていない
「モノづくりニッポン e仕事×ReVALUE NIPPON」は、人材派遣会社の日研トータルソーシングが運営する製造業中心の求人サイト「e仕事」と、中田さんが立ち上げた、日本の伝統文化・モノづくりを国内外に発信する活動「ReVALUE NIPPON(リバリューニッポン)」とコラボレーションして2014年から行っているプロジェクトだ。近年若者の製造業離れが叫ばれるなか、若い世代にモノづくりの魅力を広め人材不足解消につなげることが狙いで、日本酒セラー作りは第3弾となる。
きっかけは、全国250か所以上の酒蔵を巡り歩き日本酒普及に尽力している中田さんからの「ワインセラーのように、日本酒セラーも作れないか」という提案だった。和食に比べると日本酒は海外進出があまり進んでおらず、その理由の一つが「保管の仕方が確立されていない」ことであるという点に着目した。
日本酒の適切な保管方法については国内でもあまり浸透していない。ワインセラーのように日本酒を良い状態でストックできる場所があれば国内のみならずマーケットの世界展開につながるのではないかと考えたのだ。
プロダクトデザイナーの佐藤ナオキ氏(デザインオフィス「nendo(ネンド)」代表)がデザインを手がけ、2008年の第34回主要国首脳会議(洞爺湖サミット)でも提供された日本酒「磯自慢」の蔵元・磯自慢酒造(静岡県焼津市)や山形県産のプレミア銘柄として知られる「十四代」を作る高木酒造(山形県村山市)の協力をえて、日本酒をボトルのまま最適な状態で保存できるセラー作りを進めている。
日本酒の品質維持の要は「温度調節」だ。磯自慢酒造の代表・寺岡洋司氏によると、ワインが通常13~16度のくらいで保管するのが良いとされているのに対し、日本酒はマイナス3度くらいを目安とした超低温に保つことで、味わいを長持ちさせることができるという。
温度による日本酒の味の変化を体験できる「日本酒ラボ」を限定開店
中田さんは日本酒セラーによって、これまで「常温で(開封後)早く飲む」ことが鉄則だった日本酒の楽しみ方が変わると期待している。
「日本の居酒屋さんなんかでも、日本酒を基本的に常温で並べています。それを見るたび、国内でも日本酒の保管方法が正しく伝わってないなと思っていました。これから日本酒が国内外でますます広がっていくという時に、やはりいい状態でみんなが楽しめるような環境づくりが大事になってくると思います。日本酒セラーがその切り口になればいいと考えています」
と語った。
「モノづくりニッポンe仕事×ReVALUE NIPPON」プロジェクト第3弾の発足に合わせて、日本酒の温度による味の変化を体感できる特別店舗「日本酒ラボsupported by e 仕事」を2016年1月13日から15日まで、東京港区の草月会館で限定オープンしている。澄川酒造(山口県萩市)の「東洋美人」と新澤醸造店(宮城県川崎町)の「伯楽星」を常温で保存したものとマイナス5度~5度の間で保存したものとを飲み比べてもらう。試飲に参加した人には、磯自慢酒造の「磯自慢」や高木酒造の「十四代目」など兵庫県東条町産の最上級の酒米「山田錦」を使った日本酒造りを行う団体「フロンティア東条21」に参加している酒蔵提供の日本酒を1杯300円で提供する。