国内最速を更新し続けるドコモの通信サービス「PREMIUM 4G」その魅力に迫る!
携帯電話ネットワークの高速化は著しい。2005年、NTTドコモとソフトバンクの下り最高速度は384kbpsだった。あれから10年――スマートフォンが普及して以降、モバイルデータトラフィックは増加の一途を辿っている。ドコモは3キャリアの中で契約者数が最も多く、「カバーしているエリアは広いけれど、利用者の多い場所や時間帯になるとパケ詰まりが起きる」という声もあった。
そのイメージはもはや過去の話となりつつある。理由は2015年3月27日にスタートしたネットワークサービス「PREMIUM 4G(プレミアム4G)」だ。下り最大225Mbpsは当時の国内最高速度で、9月25日には東名阪エリアで262.5Mbpsに。さらに10月29日からは全国約410市町村で300Mbpsの提供を開始した。ネットワーク高速化の恩恵は最新機種のユーザーは当然のことながら、全ドコモユーザーにおよんでいる。
同社にとってPREMIUM 4Gは、大都市中心部の「パケ詰まり」を解消する切り札といえる。いったいどんな技術なのだろうか――。同社ネットワーク部技術企画部門担当部長の平松孝朗さんに話をうかがった。
PREMIUM 4Gは、周波数の組み合わせによって様々な高速通信を提供している
「PREMIUM 4Gは広い高速道路のようなもの」
――PREMIUM 4Gは、どのような特徴をもつサービスですか。
「LTE-Advancedと呼ばれる技術を使ったシステムとなっております。通信規格の第4世代となるLTE-Advancedには様々な技術が用いられていますが、通信速度の向上に効果的な技術の一つが『キャリアアグリゲーション(CA)』です。従来のスマートフォンは1台につき1つの周波数で通信していました。CAは2つ以上の異なる周波数を束ねて太くし、一度に大量のデータ量を受信することができます。例えるなら、通信路を1つの広い道路にして使うようなものです。お客様の誰かが大量のデータをやり取りしたとしても、強いネットワークになっています」
PREMIUM 4Gはいわば「車線の多い=道の広い高速道路」。効率的にデータを受信できる
――周波数の組み合わせはいつも同じなのですか。
「PREMIUM 4Gは、ドコモが主に使用している4つの周波数――800MHz・1.5GHz・1.7GHz・2GHzを組み合わせて運用しています。周波数の組み合わせは6通りありまして、最新のAndroid端末『AQUOS ZETA SH-01』なら3つの周波数を組み合わせることができます。通信を開始するとき、基地局が端末の能力と通信環境を見極め、一番快適な組み合わせを提供しています。ネットワーク全体で効率よく周波数を使うことができるので、最新機種をご利用でないお客様にとっても副次効果はあります」
端末1台ごとに、基地局が最適な組み合わせを考えて、提供する。だから速い
――最高速度が300Mbpsに達しただけでなく、データ通信の利用が集中する場所で実効速度が大きく向上したそうですね。
「下の図は基地局でとった渋谷駅周辺のある平日1日のデータです。LTEだったときは、朝夕の通勤ラッシュ時などの集中時間帯に実効速度が落ち込むことがありました。PREMIUM 4G導入によって改善され、いつでも変わらない快適な通信が利用できていることがわかります」
PREMIUM 4G導入により、都市部の集中時間帯も快適に
――東京都内の他の繁華街はどのように変化しましたか。
「山手線の主要6駅のデータを見ると、平均で8倍も実効速度がアップしています。規格上LTEの下り最大速度が150Mbpsで、PREMIUM 4Gは300Mbpsです。規格上の最大速度比は8倍もありません。いかにトラフィック解消に役立つ技術かが分かるかと思います」
東京都内のターミナル駅前の実効速度は、1年前と比べて劇的に向上した
――ドコモはPREMIUM 4Gのサービスエリアをマップで表示しています。他社は「○○の一部」とリスト表示になっていますが、なぜエリア図を採用しているのですか。
「われわれもサービス開始直後は『番地名で示した方がいいだろう』ということでリスト表示にしていました。だんだんエリアが拡大=リストが増えてきて、『マップの方がお客様に感覚的に分かっていただけるのでないか』と思い、現在はこのような形にしています。速度別に表記したり、この先の計画を見られるようにしたりと、こだわって工夫しています」
図の赤い場所が、東京・大阪・名古屋の中心部における300Mbpsエリア(2016年3月末予定)
――NTTドコモのサービスエリアはすべて300Mbpsに切り替わっていくのでしょうか。
「お客様に分かりやすく説明できるのは技術上の規格です。国内最速をうたっていますが、全部のエリアを300Mbpsにしようとしているわけではありません。われわれがこだわっているのは、お客様が通信する際に不快に思う場所をなくしたい、改善したいということです」
「音楽を聴きたいと思っているときには音楽が聴ける、ブラウジングしたいと思っているときにはブラウジングできる、動画が見たいと思ったら動画が見られる、といったことをいかにスムーズに提供していくか――。そこに主眼を置いています。日々の通信量データを見ながらエリアの拡大や品質改善に努めています」
モバイルのデータ通信の増加量は驚異的。こうした環境下で、NTTドコモは通信速度を加速させてきた
――現時点ではシャープ製の「AQUOS ZETA SH-01」のみ300Mbps対応ですが、その魅力を体感できる機能またはサービスはありますか。
「この端末は『倍速液晶』に対応しており、通常60ヘルツの映像を倍の120ヘルツで表示することができます。テレビの広告で『動きが滑らかに見えます』とうたっている、あの機能です。倍速液晶に対応または適したコンテンツがあれば、他の端末と比べてより奇麗な映像がお楽しみいただける――といえるかもしれません」
――今後発売する端末は300Mbpsが標準対応になっていくのでしょうか。
「お客様のご要望は多岐にわたる傾向にあります。速度を重視して購入される方もいれば、液晶画面の奇麗さやカメラ機能にこだわられる方、使いやすさで機種を選ぶ方もいると思います。らくらくスマートフォンのニーズも根強くありますし、フィーチャーフォンを望まれるお客様もいらっしゃいます。お客様のニーズにマッチした端末ラインナップを展開していくことになると思います」
――PREMIUM 4Gの通信速度はさらに上がっていくのでしょうか。
「16年度中に370Mbpsのサービスを開始する予定です。東京オリンピック・パラリンピックの開催される2020年には、次世代の通信規格である「5G」の導入を目指しています。多くの通信が発生するであろう、競技場のような施設で通信環境を整備していきます」
PREMIUM 4Gの進化は止まらない。2016年度中に370Mbpsの提供を開始する予定
2020年東京オリンピック・パラリンピックは、日本の通信事業者の技術力の高さを世界に示す、絶好の機会になりそうだ
――通信速度がどんどんアップしていくと、「今使っている端末で十分」という考えはもったいないかもしれませんね。
「PREMIUM 4Gは、ドコモのネットワークサービスを最大限に活用できる機能で、お客様のやりたいことがいつでもスムーズにできるようになっています。ぜひ新しい端末で快適な通信をご堪能いただきたい――それが一番のメッセージです。利用が集中する都市部で、エリアをしっかりと構築していることが体感いただけると思います」
NTTドコモネットワーク部技術企画部門担当部長の平松孝朗さん
<企画編集:J-CAST トレンド編集部>