「始皇帝と大兵馬俑展」―今秋、東京国立博物館で 空前のスケール、実物10体、精巧な複製70体が一堂に
秦の始皇帝(紀元前259~紀元前210)と「兵馬俑」の全体像に迫る特別展、「始皇帝と大兵馬俑展」が2015年10月27日から16年2月21日まで東京国立博物館で開かれる。
同館ではこれまで何度も中国関係の特別展が開かれてきたが、「始皇帝と兵馬俑」に絞ったものは初めて。NHKでも特集番組を予定しており、過去最大級の「兵馬俑展」ということで、古代史ファンのみならず一般の人々にも注目度の高い展覧会になりそうだ。
永遠の世界支配を夢見る
始皇帝は紀元前3世紀、中原西方の秦を大国に押し上げ、戦乱の世を制して史上初の中国統一を成し遂げた人物として知られる。単に版図を大幅に拡大しただけでなく、各地でばらつきがあった貨幣や度量衡、漢字の書体などを統一、今日に至る中国の国家としての基礎を築いた。大運河や万里の長城など壮大なプロジェクトの遂行者でもあった。そうした巨大事業ひとつとして、自らの墓であり、死後の住まいとなる「陵園」づくりにも生前から取り組んでいたという。
「兵馬俑」は1974年、中国・西安北東約30キロにある始皇帝陵園の近くで、地元農民によって偶然発見された。俑とは人形 (ひとがた) の意で、古代中国では死者に有縁の人や動物の俑がつくられ埋葬されることがあった。始皇帝の兵馬俑はスケールがケタはずれ。これまでに広さ約2万平方メートルの坑から、約8000体の陶製の人俑が見つかっている。人々の表情や服装は驚嘆の造形能力で極めてリアルに描かれており、まるで2000年以上昔の秦の時代にそのままタイムスリップしたかのようだ。
このほか馬俑が600体、戦車俑が100台ほど見つかっており、始皇帝の軍団そのものを実物大で複製して埋葬したものとみられ、いまも発掘調査が続いている。生前、地上世界の支配者となった始皇帝が死後も永遠に世界を支配する――そんな強烈な意志と野望を見せつける「地下帝国」の様相だ。
発掘現場の臨場感を再現
兵馬俑は20世紀後半の世界最大級の考古学的発見とも言われ、貴重な文物ということで中国国外への貸し出しについては制約が多い。今回の特別展では関係者の尽力で「騎馬」「将軍」「歩兵」「軍吏」など10体の実物と約70体の精巧な複製が展示されることになった。
同館では1976年、日本で初めて兵馬俑から3体を借用してきて展示したほか、折々の中国関係展で1、2点が展示されることがあったが、今回のような大量展示は初めて。
特別展は「秦王朝の軌跡」「始皇帝の実像」「始皇帝が夢見た『永遠の世界』」の三部構成で、辺境の小国だった秦を強大な帝国に成長させた始皇帝に迫り、40年にわたって発掘調査が続く兵馬俑の長年の研究成果を見せる。発掘現場のスケール感や臨場感を最新の技術と様々な工夫で再現し、始皇帝の夢見た世界と地下帝国の迫力を体感できる展示となる。主催にはNHK、朝日新聞も名を連ねており、NHKでは地上波で特別番組を放映、朝日も特集紙面で紹介する。
同展は16年3月15日~6月12日に九州国立博物館、同7月5日~10月2日に大阪・国立国際美術館に巡回、今秋から来秋にかけてもっとも話題を集める展覧会となりそうだ。