週刊「日常は音楽と共に」...本田聖嗣
月の光に何を見る
地球から最も身近な星、といえば、月です。地球にただ一つしかない衛星、もっともご近所の星、そして、人類が今のところ足跡を印したことがある、地球以外の唯一の天体でもありますね。 近年は地球環境の変化から、「火星移住」のような話題も、時々見かけますが、人間が、他の惑星に到達するには、いましばらく、時間がかかりそうです。
古来より現代にいたるまで「月」は特別な存在
ベルガマスク組曲の3曲目「月の光」の楽譜
今年は、ひときわ大きく見える満月、「スーパームーン」が話題になったり、地球を観測している人工衛星ランドサットが、「月を見て」搭載する機器の調子を調整していたりする、ということも知られるようになってきましたが、これには、インターネットの発展が大きく影響しているようです。月や流星や日食といった天体関連の話題は、一般のニュースでは、あまり大きく取り上げられないけど、全地球的に共通の話題ですから、ニュースや、観測の様子を世界の誰かと共有したい、という思いが強くなります。宇宙のトピックは、我々の日常生活にすっかり定着しつつあるインターネット、そして、それをプラットフォームとするソーシャルメディアサービスと、もともと相性が良いのかもしれません。
月だって星の一つですが、近距離で他の星より遙かに大きく見えるため、古来より、特別な存在として、人々にインスピレーションを与えてきました。かぐや姫の物語、狼男の伝説...神秘的なもの、ミステリアスなもの、そして中には恐ろしいもの...色々なお話に、月は、キーマンならぬ、キースター?として顔を出します。
イタリアで生まれたドビュッシー「月の光」
音楽家だって、月を見ていろいろ考えます。フランスの当時の若手作曲家の登竜門の最高の賞、「ローマ大賞」を受賞して、イタリア・ローマに留学したクロード・ドビュッシーは、イタリアがあまり気に入らず、パリに帰りたい帰りたいと考えていました。しかし、イタリア滞在中に立ち寄ったベルガモ地方で、着想を得て、ベルガマスク(ベルガモ風の)組曲、という組曲をものにします。その3曲目が、有名な「月の光」。青年の葛藤と、異国の空の下での不安、それを、いつも変わらぬ月の光に託したこの曲は、その後の人々の心にも、いつも「月の光」を差し込ませてくれます。お月見のお供に、いかがでしょうか。