【書評ウォッチ】ほとんど「工業製品」の食品添加物 一日あたり400~500種類も摂っていた

   どうも危ないなとは思いながら、なんとなく食べ続けているものがある。食品添加物。驚くほど根深い実態を『なにを食べたらいいの?』(安部司著、新潮文庫)が赤裸々に語る。

   この人工物1000種類以上を駆使して、あらゆるものをおいしく美しい食べ物に変身させてきたと豪語するプロからの告白と警告の書だ。

   「台所にないものは添加物」「自分でできるものは作ろう」。現代の食はもう自然や農業のイメージよりも、ほとんど工業製品に近いのだと改めて考えさせられる。【2014年6月22日(日)の各紙からⅡ】

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法に適っていても疑問視すべき問題


『なにを食べたらいいの?』(安部司著、新潮文庫)

   著者は学者でも行政マンでもない。食料品の専門商社に長く務め、いわば添加物業界にどっぷりとつかってきた。食品添加物は約1500種類あり、私たちは加工食品中心の生活で毎日400から500種類をとり入れていると本はいう。

   手軽で、おいしく、長もち。添加物を組み合わせてのヒット食品作りに、著者はまるで「魔法」使いのような自信まで感じていたそうだ。ところが、娘さん3歳の誕生日、妻が用意した食卓で呆然とする。自分が開発した肉団子を家族がおいしそうに食べていた。娘の大好物だとも聞かされた。「それは、魔法がとけたら低級のくず肉という代物です。現在はペットフードにしかなりません」

   これで目覚めたのだからドラマみたいな話だが、当事者ならではの実感がこもる。こうして著者は業界の実態を人々に知らせる側に立つ。

「たとえ法に適っていても、疑問視すべき問題があります。食品添加物です」「偽装の社長連中には、反省の色刷すらない」「中国で日本の食品を加工することはやめたほうがいい」

おいしさだけで選ばず、できるものは作る

   では、本のタイトルどおり、どうすればいいのか。安易な加工食品依存に、著者は注意を促す。食品の裏ラベルを確かめながら、自分が作った場合と商品とを比べることを提唱する。「顔を知らない他人が作ったもの」をまず疑う必要があるという。食品をおいしさだけで選ばず、自分でできるものは作ろうと勧める。当然のことだといえばそれまでだが、忙しさにかまけてお手軽重視に偏っていないか、反省の要は誰にでもありそうだ。

   現代の「魔法」が作りだした、文字通りの悪魔的な加工食品。朝日新聞の文庫紹介欄に無署名書評が小さく載っている。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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