【書評ウォッチ】平均寿命100歳はすぐそこに 家族、宗教、地球に何が?

   人間の寿命がのびる、とくに先進国では。科学技術の進歩で平均寿命が100歳を超える日が近いという『寿命100歳以上の世界』(ソニア・アリソン著、阪急コミュニケーションズ)が毎日新聞に。そのとき、労働、福祉、環境など各分野で何が起きるか。家族関係や宗教観も変わるかもしれない。

   今の少子高齢化だけでもアタフタしているのに。医療技術は革命的に進歩しつつある。これは空想の話ではない。深刻な現実論と考えるべきだろう。【2014年1月12日(日)の各紙からⅡ】

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「日本政府の見込みは甘い」


『寿命100歳以上の世界』(ソニア・アリソン著、阪急コミュニケーションズ)

   20歳で就職した人が60歳で定年後、さらに同じ40年間の「晩年」がある。いや、定年が80歳になるかもしれない。本は2010年度の平均寿命を世界一のモナコで89・8歳、日本は82・2歳と推測。100歳までは一見まだありそうだが、実はほんのわずかしかないという。

   1947年、日本人の平均寿命は52歳だった。60年余りで30歳も延びたのは、抗生物質やワクチンなどの医療技術が進んだおかげだ。今度は再生医療というより強力な切り札がある。だから「読後、日本政府の見込み(2060年に男性84・2歳、女性90・9歳)は甘いと確信した」と、評者の磯田道史さん。細胞操作や遺伝子操作、抗老化薬の開発までも本は予想する。

今の結婚制度は非現実的に

   家族関係も金銭感覚も、宗教観も変化する。大人になるまでの時間も相手を選ぶ時間もたっぷりあるから、今の結婚制度自体が非現実的に。その前に「長生きする人類に地球が対応できるか」という大問題がある。

   環境をどう浄化するか、資源をどう配分するのか。パニック映画でも観る感じだが、著者・米国シリコンバレーの研究者はあくまでクールに分析している。

   このほか『日本史の謎は「地形」で解ける』(竹村公太郎著、PHP文庫)がおもしろい。

   徳川家康が江戸に幕府を開いたのは広大な関東平野があるからというのがよくある答えだ。が、当時の江戸は湿地帯で、とてもとても。大土木工事によって新田を開発できるとの確かな見通しこそ家康のすごさだという解釈だ。

   蒙古襲来も、福岡はモンゴルにはない湿地帯で、得意の騎馬隊が機能しなかったのだそうだ。著者は元国土交通省河川局長。読売「ポケットに1冊」欄に。評者は「鵜」1字。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

   J-CASTニュースの書籍サイト「BOOKウォッチ」でも記事を公開中。

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