【書評ウォッチ】「お金を賢く考えて、友だちこそ『何よりの財産』」金子哲雄さんからのメッセージ
お金は人生の敵か味方か。その考え方・儲け方の関連書はゴマンとある中で、金銭観を改めて考えさせられる『学校では教えてくれないお金の話』(金子哲雄著、河出文庫)が読売新聞に。
もとは若者向けの指南書で値段の決まり方や節約法、幸せ論などをわかりやすく解き明かす一冊。それが年代を超えて誰にも通じる「お金とのつきあい方」談義になっている。「友だちはお金にも勝る財産」というあたりは穏当な締めくくり。決して金儲け奨励本ではない。【2013年10月13日(日)の各紙からII】
価値は刻々変わっていく
『学校では教えてくれないお金の話』(金子哲雄著、河出文庫)
最新のCDプレーヤーがほしくて懸命にアルバイトをしていたら、ある日突然あっけなく値下がりしてしまった。1万円で買った携帯電話が半年後には5千円に。こういう経験談から、お金の価値は刻々変わることを語っていく。
もちろん、反対に値上がりすることもある。需要と供給から値段が決まるカラクリを身近な例から解説する。お金は永遠不動の絶対的なものではないということか。
14歳を基準に世渡り術を指南するという触れ込みの本だが、「ドリンクバーで何杯飲めばモトがとれるか」「ハンバーガーショップがセットメニューを売る理由」「中古ゲームソフトをまとめ買いすると、安くなるのはなぜ?」「原宿・青山の美容院は高くてもなぜ人気が?」などは、大人も知りたくなりそうな話題。あちこちに張りめぐらされた値段と金儲けの仕掛けや謎を解いてくれる。
友人を集めれば「秀才」ならぬ「集才」に
大切なのは目先の損得ではなく、先を見通す力で「節約を身につければ、強く生きられる」「ほしいモノは激戦区で買え」と、ここまでくると達人の域かも。友だちについては、投資の一種である教育とともに、何よりの財産と位置づける。なにしろ税金がかからないうえに、多彩な友人を集めれば「秀才」ならぬ「集才」になれるからだと、読売読書面で「鵜」一文字の評者が紹介している。
著者は昨年、41歳で死去した流通評論家で、人気のあったプライスアナリスト。お金と賢くつきあおうという遺言が人の心に響く。
ほかには、働くアリばかりを集めると必ず働かないアリが出ると唱える進化生物学者が社会の構造をエッセイ風に論じた『働くアリに幸せを』(長谷川英祐著、講談社)が日経新聞に。人の世を思わせて興味深い。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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