【書評ウォッチ】島の魅力を理屈抜きに 疲れた都会人を癒す体験
日本に島はいくつある? 正確な数を答えられる人は少ないだろう。無人島も入れると6800以上といわれるが、海をまたいで歩き続けること40年の写真家が魅力的な島々をセレクトした『日本百名島の旅』(加藤庸二著、実業之日本社)が朝日新聞に小さく載った。なぜか人をひきつける魅力を理屈抜きの語りと美しい写真で紹介する。変化とスピードに振り回される現代人向けの、ひと手間かけたガイドブックが猛暑の疲れをいやしてくれる。【2013年8月11日(日)の各紙からI】
「旅して楽しい」それぞれの特徴
『日本百名島の旅』(加藤庸二著、実業之日本社)
北は北海道の礼文、利尻から、南は沖縄県の波照間、与那国島まで。選ぶ基準は「旅して楽しい島」といったあたりか。加計呂麻島、女木島、宝島、厚岸小島、悪石島といった名前からして興味をそそられる島々も。それらの特徴を旅人の視点から、著者は七つに分類してみせる。少しピックアップすると、
「自然豊かな島」としては天売(てうり、北海道)水納(みんな、沖縄)など
「文化・伝承の島」に、舳倉(へぐら、石川)答志(とうし、三重)日振(愛媛)ほか
「のんびり癒やしの島」には、日間賀(ひまが、愛知)、大根(だいこん、島根)、竹富(たけとみ、沖縄)など
「ぶらり散歩で楽しむ島」に、六連(むつれ、山口)、朴(ほお、宮城)、仁右衛門(千葉)などをあげる。
ほかには「味わいの島」「パワーあふれる島」「秘島中の秘島」。海の色からおいしい食べ物、ハイキング案内やそこで生まれる仲間意識の傾向まで、気楽に読めて役にも立つ。もちろん、人により異論はあるはずだ。これはあくまで島好き著者の「イチオシ」集。自分なりの「名島」を、出かける時間をつくれたら、一つでも二つでも見つけたら楽しい。疲れた都会人の心に島の魅力はますますふくらむ。無署名書評の簡単な紹介記事。
海辺と恋の100年文化史
夏といえば海と恋かは人にもよるが、連想の源流を研究者が本気で調べた『海辺の恋と日本人』(瀬崎圭二著、青弓社)を日経が。どうやら明治・大正以降の海水浴の広がりと関係があるという。それぐらいは学者でなくても察しがつくけれど、本は文学から映画、演劇、マンガなどまでを調べあげ、海辺と恋愛の100年にわたる物語をたどった。
戦後の「太陽族」「南国リゾート」などのブームや片岡義男、松本隆にも触れて大まじめに語られる。たしかに、これはもう立派な文化史だろう。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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