【書評ウォッチ】新しい働き方に必要な17の能力 ザッポス、エバーノートなどから探る
企業に縛られない自由な働き方。「もう始まっている」「そんなの、あるもんか」と就活シーズンに論争しきり。その面で特徴的な日米企業を見て回った『あたらしい働き方』(本田直之著、ダイヤモンド社)が朝日と日経新聞に。ただし、なんでも気ままにやればいいというわけではなく、必要な17の能力・スキルも提示している。最後まで読まないで「ああ、楽チンにできるじゃないか」と思ったら間違いだ。【2013年6月23日(日)の各紙からI】
自由度高く「やらされ感」少なく
『あたらしい働き方』(本田直之著、ダイヤモンド社)
自由気ままに好きなことを選んで働けたら、とは誰もが思う。そういう働き方を国境も束縛も越えてやろうではないかという「ノマド」(遊牧民)論が、批判もふくめて結構うけた。著者もその一人だが、今回は、「古い価値観や常識に縛られない働き方」の17社と1組織に注目した。社員の自由度が高く、「やらされ感」が少ないところだ。
午後3時で仕事が終わってしまう会社、社員がサーフィンをしてから出勤する会社、いくら休んでもいい会社、おもちゃ箱をひっくりかえしたようなオフィスで大学のサークルのノリで仕事をする会社もあった。どれも業績をあげているという。パタゴニア、ザッポス、エバーノート、IDEO、スタンフォード大学d.Schoolなどだ。
一方で、著者はきっぱりと言い切る。「ラクチンで労働時間が短くて、気ままに働くことを求めて、こうしたあたらしい働き方に向かおうとしても、まず無理だと思ったほうがいい」と出版社サイトで。一部太字まで使って強調している。
「大変な競争を勝ち抜かなければ」
どの企業も従業員を楽させるためにあるのではないというのは当り前だろう、甘くはない。「あたらしい働き方を手に入れるには、相応の能力やスキル、考え方が求められる」「大変な競争率の中を勝ち抜かなければ、手に入れることができない」として、著者はスキルを具体的に示している。
「コラボレーション能力」「時間効率がハイレベル」「クラウドなどITを最大限活用する能力」「不確実性を楽しめる」「明文化されていないルールを読める能力」「お金だけではなく、意義を感じて働く力」などだ。行動力や自分のスタイルも必要とされる。
「今後の働き方と会社選びの指針を提示」と日経のビジネス書紹介欄(無署名)。「いずれもユニークな企業であるため、誰もが合うとは限らない」と朝日の評者・勝見明さん。
就活生が勘違いしてはいけない。「あたらしい」「先進」とは正反対の過酷労働で若者を食い物にするブラック企業にひっかからないように、しっかり見定めてかからないと。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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