見た目ブラック、身はしっとり 福井の「焼き鯖寿司」食べ比べた

   「鯖寿司」と聞けば、ぴかぴかと光る鯖の身にツンと来るお酢――。思わず「おっ、粋だねえ」と言いたくなる「しめ鯖寿司」を思い浮かべる人が多いかもしれないが、近頃はそれとは対照的な福井名物の「焼き鯖寿司」が存在感を増しているようだ。

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アンテナショップで「レアもの」入手


シャリがふんわり柔らかめの「手押し焼き鯖寿司」

   この焼き鯖寿司は、しめ鯖寿司と同じくシャリの上に鯖が乗っているが、「ブラック寿司」とでも呼びたくなる黒く焼き色がついた皮が印象的だ。味付けは甘めで、刻んだ甘い椎茸煮がシャリに入っていたりする。味付けの系統は、うなぎやあなごの蒲焼き、太巻きといった食べ物を思わせるところがある。そして鯖とシャリの間に挟んだガリの酢で味を引き締める。これが基本レシピのようだ。

   元々、「(浜)焼き鯖」「へしこ」といった鯖の伝統食を持つ福井県で、とある飲食店が2000年に開発し、周辺の店が取り入れて人気のご当地グルメとなり、全国的にも駅弁、空弁などを通じて知られ、好評を博すようになってきた。

   とはいえ、まだいつでもどこでも買えるわけではない。そんな地方グルメを確実に入手できるのは、やはりアンテナショップだ。東京・銀座に2013年4月18日にオープンした「食の國福井館」(東京・青山の「ふくい南青山291」の姉妹店)では、2系統3種類の焼き鯖寿司をほぼ常時、販売している(売り切れなどの場合もある)そうだ。ひとつは「越前田村屋」の1本ものとハーフサイズ、そして「萬谷」の1本ものである。田村屋のものはわりとよく見かけるが、萬谷のほうは少々レアなようだ。

   店員さんの話だと、田村屋は空弁などで人気があり、萬谷の鯖寿司は地元の料亭がつくったものという。「味の違いは――食べ比べていただくのが一番なんですが」とのことで、両方買って食べ比べることにした。

「手押し」はふんわり、「押し寿司」はしっかり


萬谷の「焼き鯖寿司」は、より甘めな味

   焼き鯖寿司を食べたことがない人は、皮の焼き色を見て、何となくぱさぱさした身を連想してしまうかもしれない。だが、心配ご無用。焼き鯖寿司は、鯖を焼いたあとでタレを染みこませているらしく、厚手の身はしっとりし、甘くリッチなボリューム感がある。筆者はシンプルなしめ鯖寿司も好物なのだが、少なくとも鯖の脂ノリを享受するという点では、焼き鯖寿司のほうに軍配を上げざるを得ない。

   さて、田村屋の「手押し焼き鯖寿司」(ハーフサイズ、プラ容器入り 550円)のほうは、「手押し」だけあり、シャリがふんわり柔らかめ。ガリも多め。一方、萬谷の「焼き鯖寿司」(1本、1050円)はシャリをしっかり固めた押し寿司系。ガリは少なめで、より甘めだった。鯖はトロ鯖、お米は福井県産コシヒカリを使用するなど材料にこだわっている。

   どちらも一口サイズに切ってあるので食べやすく、味も甲乙付けがたし。今まで焼き鯖寿司を5、6本は食べたことがあるが、「外れ」だったことがない。焼き鯖寿司というレシピ自体、完成度が高く、また福井の作り手の精進の結果でもあるのだろう。

   それにしても昔ながらのしめ鯖寿司も捨てがたいし、今日日の鯖寿司選びはむずかしくなったものである。


商品名:手押し焼き鯖寿司/焼き鯖寿司
製造:田村屋/萬谷
サイズ:ハーフサイズ/1本
価格:550円/1050円

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