【書評ウォッチ】経営の常識はこんなに「ヤバい」 実はM&Aやリストラに効果なし?

   今まかり通っている、おかしなことや間違いをビジネスの分野で斬りまくる『ヤバい経営学』(フリーク・ヴァーミューレン著、東洋経済新報社)がユニークだ。評論家や自称エコノミストらがもっともらしく論じてきた常識をひっくり返すエピソードは読み物としてもおもしろい。

   横行するリストラ、成果主義、イノベーションにM&A企業買収、組織改革にまつわる「不都合な真実」。経営の「常識」にうっかり踊らされてはいけないと警告してくれる。【2013年4月28日(日)の各紙からI】

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もてはやされても実際は?


『ヤバい経営学』(フリーク・ヴァーミューレン著、東洋経済新報社)

   「扱われる様々なテーマは著者の気まぐれで選ばれたものではない」と、読売新聞で経済学者の中島隆信さん。すべて実証研究に基づくことも紹介している。その著者はフィアットやIBM、東芝などの経営アドバイザーも務めるロンドン・ビジネススクールの若手研究者だ。余談もふくめた語り口は軽いが、内容はまさにヤバい。

   たとえば、よくもてはやされるM&A。株価を中心に評価すると企業買収の70から80%は失敗だと著者は断じる。発表から10日ほどで株価は平均0.34~1%下がり、統合から5年後の企業価値は10%も減る。当初予想のプラス面よりマイナス面が多いという。なのに、なぜ買収を仕掛ける経営者が後を絶たず、いかにも敏腕社長のように扱われるのか。

「ヤバくない」経営書はいったい何?

   買収の成果なく株価が下がっても、報道されることはほとんどない。たいていのアナリストも経営者にすり寄るリポートを書く傾向が。経営者間の仲間意識も実態を隠す。

   雇用の関係では、「リストラは本当に効果があるのか」「自分の会社のことを、どれぐらい知っていますか」と著者は問いかける。

   「私がやりたいのは、ビジネスにおけるおかしな点について、何が起きているかを伝えることである」という。これが正しく、かつ貴重な執筆姿勢だとすれば、他の「ヤバくない」経営書はいったい何だ?

   『遺伝子組み換え食品の真実』(アンディ・リーズ著、白水社)が東京新聞に。日本で市販されているサラダ油やコーン油などは、米国やカナダなどから輸入された遺伝子組み換えの大豆やトウモロコシで作られている。水あめや麦芽糖やパン粉などの原料であるトウモロコシも、その可能性がある。評者の科学ジャーナリスト・渡辺雄二さんの指摘だが、こちらも「ヤバい」話。英国農家生まれの環境活動家が問題点をついた一冊だ。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

J-CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」でも記事を公開中。

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