【書評ウォッチ】サンタとなまはげの共通点 親心の系譜に心温まる
クリスマスが近い。サンタクロースってどこから来るの? 子ども心にそう思った人は多いだろう。この世界的な超有名人の実像を解明しようと試みた本がある。
『12月25日の怪物』(高橋大輔著、草思社)で、サンタを求める著者の旅が「生まれ、長じ、子を持った著者自身の人生サイクルと共鳴し心温まる幕引きとなる」までを評者・川端裕人さんが朝日新聞読書面で優しく紹介している。素朴な疑問につき動かされた旅自体も、なかなかおもしろい。【2012年12月16日(日)の各紙からII】
「家族というつながりのため」
『12月25日の怪物』(高橋大輔著、草思社)
サンタのモデルは4世紀トルコの聖ニコラウスといわれる。その信仰がヨーロッパを経てオランダ人がアメリカに持ち込み、コカ・コーラの宣伝にのって世界に広がった。この通説を調べようと、著者はトルコ、オランダ、アメリカを旅する。聖ニコラウス祭で子どもに贈り物をする習慣がプロテスタントの手でクリスマスに統合された経緯を確認する。
しかし、だ。疑問があった。サンタは冬に北国から橇でやってくるのが定番ではないか。
今度はフィンランドへ。そこには冬至の頃に人々に贈り物をする古代の「ヤギ男」が。現代のサンタまで「贈り主」の系譜。聖ニコラウスとは別の源流が、そこにあった。
子どもたちのもとを訪れる神様的な「怪物」の存在は、著者の故郷、秋田のなまはげとも似る。子の幸せを願う親の気持ちに通じ合うものがある。旅を終え、著者は父親になった自分の気持ちをそこに重ねた。
「子どもがサンタを信じるのも、親になった時に子どもに教えるのも、家族というつながりのため」という著者の言葉を書評は引用している。
人が人を慈しむ心にホッと
クリスマスは今やコーラのPRやイブを楽しむ恋人たち向けのマーケティングに都合良く解釈され続けているが、サンタの由来を追いかければ、そこには人が人を慈しむ素朴な心が息づいていたということらしい。ホッとできる一冊だ。
ほかには、東京スカイツリーの名付けにかかわった言語学者・飯田朝子さんの『ネーミングがモノを言う』(中央大学出版部)を日経新聞が著者紹介欄で。名称公募の1万8606通から「東京EDOタワー」などを抑えて決まった。なぜ「タワー」でなく「ツリー」なのか、表記と音の滑らかな印象を解説してくれる。
元政治記者が書いた『田中角栄』(早野透著、中公新書)は、総選挙から政権交代のいま読むのにいいかも。その強烈な個性とエネルギー。東京新聞が扱っている。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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