「福島第一原発事故」は歴史をどう変えたか 英ベストセラー『137億年の物語』日本語版
宇宙が生まれた時から現在までを1日とすると、人類の文明なんて最後のたった0.1秒程度――そんな途方もなく大きなスケールで「歴史」を眺める1冊が、クリストファー・ロイド著『137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史』(文藝春秋、3140円)だ。
「過去についての知識が細かい専門分野に分けられ、山のような書物の中に埋もれてしまっているせいで、多くの人は、本来歴史が教えてくれるはずのものを楽しむどころか、迷子になったり、袋小路に入り込んで出られなくなったりしている」
という問題意識から、著者が1人で宇宙、地球上の生命、人類に関する最新の研究成果を活用し、137億年を500ページ弱(日本語版)に収めた。
「原子力が世界を救うという考えは正しかったのだろうか」
クリストファー・ロイド著『137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史』
2008年の発売以来イギリスでベストセラーとして店頭に置かれ続けてきた「歴史書」の日本語版だが、ただの翻訳ではない。
ほかでもない日本で起きた2011年3月11日の東日本大震災と、それにともなう福島第一原子力発電所事故――この2つの出来事を、「137億年の歴史で言及すべき」という考えのもと、日本語化にあたって著者が結末を書き換えたのだ。
そもそも英国版では、二酸化炭素による地球温暖化による危惧からエネルギーの将来を原子力発電におくかたちで物語を終えていた。日本語版の締めくくりではこれを踏まえ、
「原子力が世界を救うという考えは正しかったのだろうか」
「このような大惨事に直面して、原子力発電を推進しようとする政党など、日本にあるだろうか」
「これほど地震が多い国で、原発が安全だと信じる人がまだ残っているだろうか」
などと疑問を投げかける。英国版も同様の内容で書き直され、「新装版」として近々発行予定だ。
人類の歴史を変えた人物トップ10は…?
物語は、宇宙がはじまってから人類が登場するまでの間に地球に存在した生命について(第1部 母なる自然)、自然界における人類の進化について(第2部 ホモ・サピエンス)、人類のさまざまな文明の発達について(第3部 定住)、このような文明と自然界がひとつにまとまっていく流れについて(第4部 グローバル化)の4部構成。
豊富なイラストと写真で旅するように歴史を感じられるつくりで、文章も平易なので、大人だけでなく子どもも楽しめそうだ。42のテーマごとに書かれた記事の最後には、参考文献や注も充実しているうえ、索引もありさらに理解を深められる。
巻末には、人類の歴史を変えた人物、作物など、さまざまな切り口からの「歴史のトップ10」を収録しているのも興味深い。
2012年9月10日、発行された。