【北京発】語尾に「スムニダ」で韓国人のふり 尖閣デモ過熱で日本人が「防衛策」
9月10日(2012年)から頻繁に、北京の日本大使館からメールが送付されてきている。登録すれば配信してもらえる「在留邦人向けメールマガジン配信サービス」によるもので、過去のメールでは、狂犬病情報だったり、鳥インフルエンザ情報だったりと、その折々の注意事項が含まれている。
今回は「最近の日中関係の動きに係る注意喚起」というタイトルだ。
「できる限り1人でタクシーに乗車しない」
北京のコンビニの棚から、日本製品がごっそり消えた
内容を抜粋すると、9月13日送信分では、
「不要不急の用務で大使館に近づかない。
1人での夜間外出を避ける。
昼間であっても日本語で大声で話をするのを控える。
できる限り1人でタクシーに乗車しない」
などの、注意事項が述べられている。
尖閣諸島問題で、日本大使館の前では連日抗議デモが行われており、当初数十人規模だったものが、9月15日には数千人に拡大したと報道されている。上記の通り、「大使館に近づかないように」と大使館が日本人に呼びかけている上に、周囲は交通規制もされ、近寄ろうにも近寄れない。しかし、大使館のすぐ近くには、日本人専用公寓(アパート)があり、そこに住む住民たちは戦々恐々としている。MUJIやユニクロなども店を閉めているという。
上海日本人学校浦東校が9月15日に予定されていた運動会を、反日デモが最大となると思われる9月18日以降の19日に延期したのに続き、北京日本人学校も15日の予定だった運動会を21日に延期した。児童・生徒が楽しみにしていた恒例のパン喰い競争や親子競技などもカットされ、規模を縮小して時間短縮で行われることになったという。さらに北京日本人学校では9月18日の休校を決定した(その後、上海は19日の運動会は中止を決定、北京日本人学校は、17日、18日の2日間が連続で休校となった)。
なぜ9月18日なのか。実は日本では日付まであまり意識されていないが、9月18日は、満州事変(柳条湖事件)勃発の日。中国では「918事変」と呼ばれており、日本の二・二六事件のように日付が事変名になっていて、忘れにくい。そのため、9月18日に反日感情がとくに高まると言われている。
「尖閣・中国漁船」事件のときよりシビア
2010年の北京日本人学校の運動会は、まさに9月18日が土曜日で、運動会が予定されていたが10月に延期となった。この年のやはり9月、尖閣諸島周辺海域で海上保安庁の巡視船と中国漁船が接触し、漁船の船長が逮捕されるという事件がきっかけで、日本大使館に対する抗議運動が起こり、天津日本学校に金属球が打ち込まれるなどしたためだ。しかし、今年の反日運動は、2年前とは比べものにならないほどシビアだ。
反日感情が高まっているときには、日本人とわかると、タクシーの乗車拒否にあうことも多い。2年前も、日本人がタクシーに乗車拒否されたり、乗せてもらえても運転手に日本人とばれると、罵られたり、降ろされたり、という事例が相次いだ。中国語がネイティブ並みに流暢ならよいが、たいていの場合、話すと外国人とばれてしまう。
日本人とばれないようにするには、どうすればよいか。対策を聞いたところ、英語ができるならシンガポール人のふりをするのが一番だとのこと。「韓国人のふり」作戦というのもあるという。これは日本人奥様方が複数でタクシーに乗った場合に、つい日本語で話をしてしまうので、会話の語尾全部に「スムニダ」をつける、というかなり乱暴なものだ。
が、確かに日本語と韓国語のイントネーションは似ているので、語尾に「スムニダ」「ハムニダ」をつけると、外国人が聞けばかなり韓国語っぽくなるようだ。「今日、ご飯どこで食べようかスムニダ」「xxはどうハムニダ」……。冗談かと思ったが、実際にやって成功したという。しかし、事態が悪化したらこんな呑気なことも言っていられない。
今年2012年は日中国交正常化40周年にあたり、「日中国民交流友好年」として、さまざまな記念事業も実施されているのに、この事態である。住民としては早期の沈静化を願うばかりだ。
小林真理子