迫るロンドン五輪、裏も表も楽しむ法 「目から鱗」の実態・物理・歴史
いよいよ、ロンドン・オリンピックの開幕だ。世界が興奮する4年に1度の人類の祭典。アスリートの競演、国家の威信、巨大マネーの動き。夢の舞台も舞台裏も全部楽しみたい。J-CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」(https://books.j-cast.com/)でも特集記事を公開中。
オリンピック・マネーの歴史と現状
『オリンピックと商業主義』
オリンピックといえばアマチュアリズム。参加することに意義がある。長い間、そう思ってきたが、オリンピックに商業主義というもうひとつの顔が加わったのはいつのころからか。集英社新書の『オリンピックと商業主義』(著・小川勝、777円)は、現代のオリンピックがどのように変遷してきたかを豊富な資料に基づいて正面から取り上げた力作だ。
アスリートたちが鍛え磨いた力と技を競い合う最高の舞台であることには変わりはない。しかし、その背後で放映権料やスポンサー料など莫大なカネが動く。一方で、こうした資金のおかげで途上国の選手が参加できる側面もあるという。五輪礼賛でも金権批判でもないスタンスで検証する「もうひとつのオリンピック史」だ。
東京五輪の成功支えた若き精鋭たち
『TOKYOオリンピック物語』
1964年10月10日、東京オリンピックの開会式。東京の空は前日と打って変わり見事な青空が広がった。敗戦国日本が復興を世界に宣言した瞬間でもあった。小学館からの『TOKYOオリンピック物語』(著・野地秩嘉、1890円)は、この大会を成功させるために各界から集められた多くの人々の知られざる人間ドラマの記録である。
鮮烈な印象を与えるポスターをつくったグラフィックデザイナー亀倉雄策、オリンピック担当相の河野一郎が「記録性に欠ける」と批判して「記録か、芸術か」の論争を起こした映画の監督は市川崑、その市川を擁護して間を取り持った高峰秀子、選手村の食事を担当した帝国ホテルの村上信夫……。まだ若かった精鋭たちの熱い奮闘のドキュメント。ノンフィクションの醍醐味がここにある。
流体工学からみえてくる金メダル奪取法
『オリンピックに勝つ物理学』
オリンピックと物理学。意外な取り合わせに見えるが、読めば、なるほどと目からうろこだ。講談社から7月20日発売予定の『オリンピックに勝つ物理学』(著・望月修、840円)は、物理学から見た科学的金メダルの奪取法を解説する。
「流して走っているように見えるボルトが速いのはなぜ?」「水の抵抗を抑える究極の泳ぎとは?」「福島千里が世界記録を叩き出す方法がわかった!」「ディーン元気がもっと遠くまで槍を投げる法」といった疑問を解き明かす。空気や水の流れ、地面や氷雪面との摩擦を調べる流体工学から見えてくるオリンピック必勝法である。肉体の鍛錬と科学が結びついて新たな記録が生まれる不思議と面白さ。オリンピック競技の見方がガラリと変わる1冊だ。