【書評ウォッチ】全国のシャッター通りはなぜできた? 原因と再生の道を考える
【2012年6月24日(日)の各紙から】全国に広がるシャッター通り。多くの街から店屋が消えて、もうだいぶたつ。『商店街はなぜ滅びるのか』(新雅史著、光文社新書)は、原因と再生の道を考えた一冊だ。
そもそも商店街はいつからできたのか。昔からあったなーと漠然と考えがちだが、「本書はその常識を覆していく」「歴史をさかのぼることで商店街の特質と問題の構造を明らかにした」と、朝日の評者・中島岳志北大准教授は読みとっている。
大正期からの生き残りと衰退
『商店街はなぜ滅びるのか』
大正期の不況で農村から都市へ離農者が流入し、商売を始めた。にわか仕込みの小売商に対して、消費者は協同組合をつくり、行政は公設市場設置を進め、繁華街には百貨店が登場する。小売商側はそれらの長所をどん欲に吸収することで生き残っていく。それでできたのが、異業種の専門店を連ねて「横の百貨店」をめざす商店街だ。
徒歩圏で買い物をしたいという消費者ニーズにも合っていた。戦後は引き揚げ者や離農者をさらに吸収して拡大したが、スーパーの進出で危機が訪れた。商店街は一斉に反対運動を起こし、大規模店舗法などを政府につくらせるなど既得権益集団となっていった。
しかし、「街の有力者」の政治的圧力でことは解決しなかった。
化石ハンターの数奇な生きざま
かつてのハングリー精神をわすれて自分たちの商圏維持に熱を入れても、消費の流れはとまらない。親族による世襲経営にとらわれた排他主義が衰退に輪をかける。自身の跡継ぎ問題。そこへ、郊外への大型店の進出やコンビニというよろず屋式小売り店の急増。シャッターを下ろした店が、今や全国どこでもの風景に。
こうした歴史を解き明かしたうえで、著者は外部の若者の参加を促すことで商店街の再生を模索する。「そのためには排他的な経営のあり方を変えなければならない」という評者の見解は、だれでもそう思う、当然の帰結だろう。
このほか、化石ハンターについて書いた「なっとく科学の1冊」という読売のコーナーがおもしろい。読書欄ではなく、お隣ページのくらし・教育欄。後に有名な採集家となる少女に焦点を当てた『メアリー・アニングの冒険』(吉川惣司、矢島道子著、朝日選書)をすすめる。
博物学に貢献した在野の採集家たち。「一つの発見が学問や世界観を覆し、発見者の運命をくるわせる。化石ハンターの数奇な生き様にひかれる」と、担当記者が書いている。
(ジャーナリスト 高橋俊一)