「終わり」ではなく「始まり」だった リーマン・ショック再び米を襲う
欧州経済危機は予断を許さぬ状況が続く。年明け早々、ユーロ圏9か国の国債の格付けが一斉に引き下げられるなど一段と深刻さを増した。いよいよ世界大不況がやってくるのか。さまざまな要因が絡み合う「経済危機」を読み解く4冊を紹介する。(J-CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」https://books.j-cast.com/でも特集記事を公開中)。
探偵となって経済のミステリーを解く
『誰が「地球経済」を殺すのか 真相を読み解く七つ道具』
タイトルはちょっと物騒だが、辛口エコノミストとして知られる著者一流の洒落かもしれない。実業之日本社の『誰が「地球経済」を殺すのか 真相を読み解く七つ道具』(著・浜矩子、1470円)は、地球経済というミステリーをやさしく解説する。
経済のグローバル化が進んだこの20年間にアジア通貨危機、リーマン・ショック、欧州財政危機とさまざまな危機が発生した。根本原因はどこにあるのか。本書によれば、難しく考えることはない。「経済は人間の営みそのもの」と読者を人間ドラマの世界に誘い込み、まるで探偵になった気分で謎を解いていく。その手助けとなるのが、「ドラマ」「人」「数字」「座標軸」「反対」「歴史」「言葉」の七つ道具だ。「経済危機」の真犯人探しの1冊である。
「ウォール街を占拠せよ」の元凶はなにか
『誰が中流を殺すのか アメリカが第三世界に堕ちる日』
阪急コミュニケーションズから発売中の『誰が中流を殺すのか アメリカが第三世界に堕ちる日』(著アリハナ・ハフィントン、訳・森田浩之、定価2100円)は、アメリカのニュースサイト「ハフィントン・ポスト」の創設者で、「ネットメディアの女王」といわれる著者の警告の書だ。
「ウォール街を占拠せよ」とアメリカの若者たちがニューヨークの金融街を埋め尽くしたことは記憶に新しい。仕事につけず、住む家もない若者たちが格差拡大の現状に怒り、大規模なデモを展開した。著者はその元凶を追及、このままでは中流層が富める者とその他大勢に2極化されると警鐘を鳴らす。訳者はNHKの元記者。あとがきで「それはそのまま日本で起きていることだ。(略)今の日本人に、ひときわ大きなものに聞こえる」と述べている。
欧州経済危機を克明に分析
『ブーメラン 欧州から恐慌が返ってくる』
文藝春秋から1月26日発売予定の『ブーメラン 欧州から恐慌が返ってくる』(著・マイケル・ルイス、訳・東江一紀、定価1470円)は、ブラッド・ピット主演で映画化された『マネー・ボール』の著者による新作。
サブプライムローンの暴落が引き金となったリーマン・ショックは世界に恐慌を引き起こしたが、それは「終わり」ではなく、「始まり」だった。著者は財政・金融危機に陥ったアイルランド、アイスランド、ギリシャ、ユーロ最後の貸し手ドイツなど欧州の国々を克明に取材、原因を分析するともに各国ごとの悲喜劇を描き出す。そして、「この欧州危機は再び米国に返ってくるだろう、ブーメランのように」と予言する。対岸の火事ではない。国の借金がGDPの2倍にも達する日本にも飛び火する可能性大なのだ。
2012年は「世界大恐慌元年」になる
『「金・ドル体制」の終わり もうすぐ大恐慌』
リーマン・ショックなど、これまで様々な経済見通しを的中させてきた著者による予側と予見の書である。祥伝社から発売中の『「金・ドル体制」の終わり もうすぐ大恐慌』(著・副島隆彦、1680円)は、緊迫する経済・金融情勢を分析し「2012年、世界は金融恐慌に突入する」と予言する。ヨーロッパの大銀行が次々につぶれ、アメリカはユーロ恐慌と心中、世界は「デフレとインフレの合体型」の大恐慌に襲われる。日本への影響としては、円高株安がさらに進む。1ドル=70円割れとなり、日経平均は7000円台から6000円台へ向かい、金は1グラム=8000円を目指すと説く。
巻末に「大恐慌に打ち勝つ日本株51銘柄」が付録として付いている。