絶品!天然とらふぐ、鰻、かき 浜名湖「A級グルメ」探訪

   「舘山寺 松山隠し 湖を来て ここは小春の 入り江さざなみ」――。北原白秋も思わず一句残した景勝地・浜名湖(静岡)が、今は「A級グルメの地」として広まりつつある。

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「遠州灘天然とらふぐ祭り」開催中


ホテル掬水亭「華の膳 天然とらふぐづくし」の一部(写真上=3人前)、水揚げされた天然とらふぐ(写真下)

   静岡県内唯一の汽水湖として知られる浜名湖および、その延長にある遠州灘は「魚介類天国」といっていいほど多くの種類を水揚げしており、その数は裕に100を超える。中でも、この地域でウナギ(天然・養殖)が有名だが、じつは天然のとらふぐや牡蠣(かき=養殖)も、舘山寺温泉などを訪れる観光客らの舌を楽しませているのだ。

   浜松市の館山寺温泉旅館組合に属する12の宿泊施設で8年前から時期限定で実施している「遠州灘天然とらふぐ祭り」が今年も人気を呼んでいる(2012年2月末まで)。この数年、産卵周期の関係で減ってきてはいるものの、国内の天然とらふぐの約6割が遠州灘海域で水揚げされており、舞阪漁港によると、今年の天然とらふぐの特徴はサイズが大きいことで、1.5~2キロのものが多めだという。

   舘山寺温泉では、そんなプリプリの天然とらふぐ料理をふんだんにふるまう一泊2食付き料金を1万7000円~と、リーズナブルに設定している。東京あたりだと、3万円はするというのだからお得だ。天然とらふぐの「てっさ(刺身)」は養殖物とは別格の歯ごたえをもつ。焼いても、そのしたたり落ちる脂に養殖物との差は歴然で、グルメ派のいかなる舌をも満足させるに違いない。

浜名湖は「うなぎ養殖の発祥の地」


天然うなぎのうな丼(「魚河岸料理 太助」)
「牡蠣カバ丼」(1500円、「うなぎ湖畔食房 舘山寺園」)

   さて次なるは「うなぎ」。浜名湖は、100年以上の歴史を誇るが、近年は、世界的な稚魚(シラスウナギ)不足に加え、海外産の流入や養殖業の後継者不足といった懸案材料もあるなかで、「うなぎ養殖の発祥の地」浜名湖周辺のうなぎ専門店も苦しい経営を余儀なくされている。現に、「このところ、うなぎの価格が大幅に上がっている。うなぎだけで商売しているところは、やっていけるんだろうか」(「魚河岸料理 太助」の店主)との声も。

   とはいえ、「全国ブランド」としてのプライドが消えることはない。他県に比べ、養鰻池の規模はどこも小さいが、エサを工夫し、必要以上に手をかけて、甘く深みのある「浜名湖うなぎ伝統の味」を守っているのだ。

   周辺の店では、養殖の「うな丼」が2000円前後、時価仕入れとなる貴重な天然が2500円~2800円で味わえる。天然うなぎは皮が硬いものが多いため、養殖物よりも多少蒸す時間を要すが、「脂の質がさらっとしていて本来のうなぎの味が楽しめる」と、わざわざ遠方からもやってくるという。

   最後になったが、浜名湖のカキも近年、注目度急上昇中の食材となっている。「うなぎ」の陰に隠れて目立たなかったが、浜名湖でのカキ養殖開始は1887年(明治20年)と古く、湖南部と湖北部の環境の違いを利用して3回移植を行い、約1年半かけて収穫される。

   舞阪町の牡蠣むき業・八木田商店によると、浜名湖の牡蠣は身がふっくらとしていて重量感があり、濃厚な味だという。そんな特長ある牡蠣を利用し、浜名湖丼研究会などが「牡蠣カバ丼」を考案、舘山寺温泉街およびその周辺店舗で提供を始めたのは2010年秋のことだ(値段は1300円前後)。民放が主催した「全国新グルメ選手権」で2位に輝いた実力はなかなかのもの。蒲(かば)焼きのタレで味付けした大粒牡蠣の食感はミルキーの一語で、添えられた白髪ねぎや玉ねぎ、浜名湖産の海苔(のり)との相性もいい。浜松市西区にある「うなぎ湖畔食房 舘山寺園」では、「休日、多い日で50食くらい出る」と話している。

   遠州灘の天然とらふぐにうなぎ、牡蠣。浜名湖・舘山寺温泉は、「B級」ならぬ「A級グルメ」を格安にたんのうできる超穴場と言っていい。グルメや観光の詳細は、舘山寺温泉観光協会(053-487-0152)で教えてくれる。

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