「ぐだぐだ」な低予算アニメなぜ人気?「gdgd妖精s」制作者の隠された狙い
2頭身キャラたちが「ぐだぐだ」なやりとりを繰り広げるCGアニメ「gdgd妖精s(ぐだぐだふぇありーず)」(TOKYO MX、毎週水曜27時~)のBD、DVDが2012年1月27日に発売される。
15分枠の低予算作品ながら、アニメとしては珍しいバラエティー番組のような構成やシュールな映像、声優によるアドリブ合戦などが受け、当初予定になかったBD発売も決定した。人気の背景を探るべく、プロデューサーの福原和晃さん、脚本・演出の石舘光太郎さんに話を聞いた。
「ぐだぐだ」の裏には綿密な計算が
妖精たちが「ぐだぐだ」な会話を繰り広げる (C)2代目gdgd妖精s
製作の中心となっているのは映像監督を務める菅原そうたさんと、脚本・演出を担当する石舘さんの2人だ。石舘さんの演出でセリフを収録し、その音声に菅原さんがCGで映像をつける、という手法で、このほかキャラの表情を手がけるスタッフ、および音楽・音効担当など総勢十数名が携わっているという。
――企画の出発点は?
福原「私とそうたさんでCG、ギャグ、プレスコ手法(※先にセリフを収録し、それに合わせてアニメを制作する方法)の作品を作ろうと盛り上がったところからの始まりです。タイトルは石舘さん案でgdgd(ぐだぐだ)を使うことで、色々と許されたりハードルを下げる効果もあるかなと」
石舘「コンセプトは福原Pからの唯一にして最大の難題で、『アニメファン・声優ファンはもちろん、そうたくんの映像世界が好きなサブカルファン、さらには新しい物好きの一般層まで、幅広く受け入れられる作品にしてほしい』というものでした。
それぞれの層の方々に「新鮮な要素」を用意したかったので、想定ターゲットごとに新しく、かつ、喜んでくれそうなアイデアを用意しました。基本的にはコントや漫才、大喜利などの一般的なお笑いの要素で構成し、いつの間にかキャラクターに愛着がわいてくればわいてくるほど内容が面白く感じるような構造を目指しました」
――番組の「低予算」ぶりはたびたびネタにもなっていますが、具体的には……?
福原「他のTVアニメーションと比較したら、間違いなく低予算でしょう。金額は秘密です」
台本は当日渡し、ほぼ一発撮り!
左からコロコロ、ピクピク、シルシル。全編3Dの本作だが、表情部分のみは2Dアニメで制作。親しみやすいかわいさを目指した (C)2代目gdgd妖精s
本作の登場人物は妖精の森に暮らす、素直なピクピク(演:三森すずこさん)、自由奔放なシルシル(演:水原薫さん)、ミステリアスなコロコロ(演:明坂聡美さん)の3人だ。彼女たちのやりとりが番組の大きな魅力となっているが、収録現場はどんな様子なのか。
――3人への演技指導は?
石舘「水原さんにはキャラ演技のお願いとして『日下部みさお(※「らき☆すた」で水原さんが演じたキャラ)をギャルにした感じで』というオーダーをさせていただきました。三森さんには『真面目で女の子っぽく、極端な話「ちびまる子」のたまちゃんです』とお願いしました。明坂さんには『表面的には綾波レイ(※新世紀エヴァンゲリオン)や長門(※涼宮ハルヒの憂鬱)の延長上のキャラだけど、さらに一癖ありそうな感じで』とお願いしました。そして、それ以上は細かく言わないので自由に膨らましてやってください、と。3人とも想像を遥かに越える仕事をしてくださったので、とても感謝しています」
――収録はどのような形で?
石舘「収録は全編プレスコ、台本当日渡しのほぼ一発撮りです。時間が無かったこともありますが、ローポリにアナログ感を与えたかったのでライブ感を大切にした結果でもあります。あえて多少のイントネーションミスや甘噛(が)みはそのまま使わせていただいています」
――現場の雰囲気は?
石舘「基本的には時間に追われてましたね(笑)制作側の準備不足も多分にあり……。ただそんな中にも、なんだか全体的に『すごく型破りなことをしている!』というワクワク感みたいなものはあったような気がします。追われているにもかかわらず笑いは絶えませんでした」
だんだんキャラが崩壊していった「アフレ湖」
「アフレ湖」に登場するシュールなCGキャラには、ファンからもカルト的な人気 (C)2代目gdgd妖精s
「アフレ湖」は、10秒ほどのシュールな映像に、出演者が適当にセリフ・ナレーションを付け合ういわば「大喜利」的なコーナーだ。このコーナーこそ「本編」というファンもいるほどの人気だが、その舞台裏についても尋ねてみた。
――きっかけは?
福原「アフレ湖は従来のアニメにはないコーナーとして、石舘さんに提案を受けました。声優さん・製作者の挑戦企画としてやっています。結果、失敗(火傷?)してもかわいらしいと思えるあたり、新たな発見がそこにはありました」
――収録はどのような形で?
福原「アフレ湖もプレスコ収録ですが、映像を見てアフレコするというスタイルです。映像自体は声優さんに当日見せ、他の声優さんが何を言うのか分からない、アドリブ頂きますよ、という状態です」
――アドリブが飛び交い、出演者の「素」が出ている「アフレ湖」ですが、何か指示などはされていますか?
石舘「ピクピクはできるだけキャラを崩さず、ピクピクが言いそうなかわいくて素直なことを意識してほしい、とお願いしました。シルシルは映像に声を当てる時、半々くらいでシルシルの声を意識してほしい、とお願いしました。トーク部分もできるだけシルシルの声で、ただし吹き出しちゃったときなどは気にしなくていいです、とお願いしました。コロコロは映像に声を当てるときは毎回キャラが変わっちゃっていいです、とお願いしました。そのために顔つきが変わる設定にもしたので(笑)。一応、三者三様でキャラと素の中間を楽しめるように考えてみました」
福原「基本的に(アフレコ後の)受けのトークはキャラクターでと演出していましたが、2回目、3回目と収録を重ねる毎に良い具合に崩壊していきましたね(笑)」
「酷い!」「アウト!」「面白い!」の言葉が励まし
しっとりした雰囲気のエンディング。毎回異なるカメラワークにも注目 (C)2代目gdgd妖精s
――ニコニコ動画では各話10万回近い再生数を記録し、主題歌もiTunes Storeで一時アニソンチャートの首位に立つなど、ファンから大きな反響を受けています。
石舘「非常にありがたいです。正直、思い描いていたよりも皆さんのリアクションが早かったです。6話くらいからじわじわ話題になり始めて、終わった頃、一部に評価していただけるかな?というイメージでしたので。最初はもうちょっと風当たりが強いかと思っていました(笑)」
――主題歌といえばエンディングは、本編と違いシリアスな曲調ですが……?
石舘「『ぐだぐだと楽しく毎日を過ごしている妖精さんたちだけど、人間界・地球の現状を嘆き悲しんでいる』というテーマで音楽担当の井上(純一)くんにお願いしたところ、井上くんが『地球に失恋した人間の気持ちを妖精たちが代わりに歌っている』という、まさかの失恋ソングを書いてきてくれました(笑)」
――最後に、視聴者の方へのメッセージをお願いします。
福原「gdgd妖精sをご覧頂きスタッフ一同、本当に感謝しております。ご存知の通りgdgdは低予算・少人数での制作ですが、みなさんの『酷い!』『アウト!』『面白い!』の言葉に励まされ、助けられて何とかここまでたどり着くことができました。最終話までハードルを上げずに、楽な気持ちで観ていただけたらうれしいです」
石舘「こんな低予算で、内容的にも自由で型破りな作品をいち早く気に入っていただいて本当にありがとうございます。とりまワンクールではありますが、最後までどうかよろしくお願いいたします」