【Paris発】パリのレンタルEVサービス 「オートリブ」いよいよ始動!
この10月から、パリ市が運営するレンタルEVサービス、オートリブがスタートした。これは2007年に始まったセルフ式レンタル自転車、ベリブの自動車版で、パリ市内各地にあるステーションで、24時間いつでもレンタルでき、返却はどこのステーションでもOK。ベリブに続き、パリの渋滞と大気汚染緩和の妙策として期待されている。
市内33か所でレンタル可能、セキュリティ対策も万全
シャンゼリゼ近辺のオートリブ・ステーション
オートリブのレンタル基本料金は1日10ユーロ(約1100円)、1週間15ユーロで、利用料金は最初の30分が7ユーロ、続く30分が6ユーロ、1時間を超えると、それ以降は30分ごとに8ユーロとなる。1年契約の基本料金は144ユーロ、利用料金は、若干安くなる。現在はテスト期間として、市内33か所、66台のレンタルが行われているが、サービスが本格的に始まるのは12月5日で、パリとその近郊46の自治体で300台のレンタルが始まり、2012夏には1000以上のステーションで3000台が稼働する予定だ。
車はボロレグループのEV、ブルーカーBluecar。全長3.65mの4人乗り、3ドアハッチバックのコンパクトカーで、最高時速125km、フル充電で250kmの走行が可能だ。GPS装備のオートマ車で(フランスではいまだにマニュアル車が主流)、また、トラブル時に非常ボタンを押すと、管理センターと連絡ができるというセキュリティ対策も万全だ。
オートリブの普及は本当にエコに貢献するか?
使い方を説明するスタッフの姿が
オートリブの利用が一般化すれば、大気汚染の元になる2万2500台のガソリン車のマイカーがお払い箱になる、という試算がある。ところで、公共の交通機関が発達し、おまけに駐車場代の高いパリで、マイカーを所有しているのはどんな人だろう?車好きと呼ばれる人種、地下鉄なんかに乗りたがらないハイソな人々……いずれもオートリブが普及しても車を手放さないだろう。また、郊外からマイカー通勤する人は、パリ市内しか利用できないオートリブは、使えない。となると、車は週末の買い物や夜の外出に使う程度、という人が、駐車場代、保険料などなど車の維持費を計算し、オートリブ派になる可能性も。あとはステーションが自宅近くにあるかどうかがポイント。ただ、いざ使いたい時にステーションには車が一台もない、という事態も起こりうるが。
また、「ベリブで、自転車のよさが分かり、マイ自転車を買った人がいるように、オートリブを試して、マイカーをEVに買い替える人も出る」なんて声もある。しかし、フランスは発電の75%を原子力に頼る原発大国で、サルコジ大統領は次世代原子炉開発にも積極的。EVが普及すれば、ますます原子力発電への依存度が高くなると思われる。フランスは地震がほとんどない国ではあるが、9月には死傷者を出す原発事故も起きたし、原発がテロの標的になる可能性も。3・11以来、どうもEV=エコとは安易に捉えられない。このオートリブ、本当にエコに貢献するのかどうかは、本格始動してからの結果待ちというところか。
江草由香