【北京発】「黄砂」吹けば洗車屋もうかる 行列の先にえっ!?の光景が
北京の空気が澄み渡ることは少ない。朝、窓から外をみて、大気汚染のせいか黄砂のせいか、1ブロック先のビルが霞んでいると、ああ今日もか、とため息が出る。
黄砂のせいで少しの雨でも泥車に
4月30日の北京市内。この日、今年最高の黄砂が記録された
4月末には北京で今年最悪の黄砂が記録されたという。前後2、3日にわたり空気は黄色く霞んでいた。そんな日によりにもよって、うっかり窓を開けっぱなしにしてしまった。前夜、少し空気を入れたくて夜に開けた窓を閉め忘れて外出するという大失態で、戻ると床はじゃりじゃりで、使い捨て紙モップでそっと拭いてみたら、真茶色というか、真っ黒というか、外の歩道を拭いてもここまでなるか、と思うほどだった。こんな黄砂の日に雨が降るのは「天から泥水が降ってくる」ようなものである。前日に小雨が降ったため、この日の北京市内を走る車はどれもみな泥車だった。こうなると正直、車に乗るにもドアの取っ手にさえ触りたくないという状態になる。
雨で汚れる車
北京市内では、道端や高架道の下でよく雑巾を持って車を呼び止める人を見かける。彼らは洗車業で、足元には水の入ったバケツが置いてある。バケツでなくて何かの空き缶の再利用であることも多い。タクシーがよく利用している路上洗車だが、道端で水をどう補給しているのか不明だ。緑化用の水源を勝手に使っているという説もある。こういう路上の洗車屋さんのほか、大型店舗の地下駐車場や修理工場などでも洗車は頼めるのだが、亮馬橋近辺に運転席に人が乗ったままで洗車できる自動洗車機があると聞いて、見物に行ってみた。
自動洗車機と思いきや中は人力!
ガソリンスタンドに設置された自動洗車機(人力)
ガソリンスタンドに設置された洗車機には行列ができていた。黄砂で雨が降った翌日で、あまりの汚さに皆、耐えられなくなったのだろう。ところがこの洗車機、見かけは日本のと同じような門のようなところに車を進入させていくのだが、よく見ると、内側にあの巨大な回転ブラシが見えない。実は中は「人力」だった! この「洗車機」の中に車を進めると、まず高水圧のホースで全体に水を噴射(人間がやる)。その後、少し車を進めると、洗剤の泡が吹きつけられ、雑巾で拭かれ、また少し進めると、水洗いしてくれ、最後は乾拭きである。「洗車機」の外に出ると、車内のゴミを掃除機で除去、タイヤ周りを拭いてもらって終わりとなる。総勢3、4人で15分ほどの作業だ。
3、4人が15分ほどかけてピカピカに
お値段は乗用車40元、SUV50元、MPV80元とある。地下駐車場やスーパーなどでの洗車が10~20元、路上での洗車が5~10元程度だそうなので、それらに比べるとお高いが、とりあえず車はピカピカ状態になる。しかし悲しいことに、洗車直後にほんの少しでも雨が降ると、元の木阿弥。この日の翌日にほんの少しの雨が降り、車はまた泥車に戻った。雨が少ないとはいえ、何しろ大気中にいろいろ混じっているので、少しの降雨でも車はすぐ汚れるし、雨でなくても大気中の汚れの付着率は高い。洗車とのイタチごっこに疲れると思うのだが、意外と泥車状態で走っている車は少ない。車はステータスシンボルでもあり、泥車のままで走るのはオーナーのプライドが許さず、手間とコストをいとわないのだろう。黄砂も大気汚染も相変わらずの北京では、洗車ビジネスの衰退はなさそうだ。
文:小林真理子