福沢諭吉、米女性とツーショット撮影 帰国船ハワイ出航まで内証のワケ
永久保存版の一冊、『レンズが撮らえた幕末の日本』
山川出版社は2011年4月15日、新刊本『レンズが撮らえた幕末の日本』(著・岩下哲典、著・塚越俊志)を発売した。およそ200ページに渡って掲載されている写真は、幕末をそれぞれの思いを抱きながら生きた人々、当時の暮らしぶりがわかる街中の風景、そして港や船など、貴重なものばかりだ。
いくつか主なものを紹介しておこう。巻頭カラー特集には遣欧使節団がエジプトを訪れた際(1864年)、スフィンクス前で撮影した写真がある。当時の着物姿とスフィンクスの取り合わせはなかなか興味深い。見開き左ページには井上俊三氏が撮った坂本龍馬の復元着色写真だ。
本文では、藩ごとに紹介されているところで、龍馬とともに暗殺される直前に撮られたという中岡慎太郎の厳しい表情の一枚。後藤象二郎の立ち姿もある。薩摩藩からは小松帯刀、若き日の大久保利通。そして、初めて日本人が写真撮影に成功したといわれる島津斉彬の半身(1857年)。長州藩では、やはり血気盛んなころの井上馨に伊藤博文が。
さらには、板橋宿で斬首されるほんの数年前の新撰組・近藤勇の写真。1860年(安政7年)、総勢77人による遣米使節団がサンフランシスコで宿泊したインターナショナルホテル(当時)。その使節団のなかで最年少で参加し、アメリカ女性たちからの人気が一番高かったという立石斧次郎。サンフランシスコの写真館令嬢とツーショットの福沢諭吉。一枚の写真に並んで収まる26歳・高杉晋作、24歳・伊藤博文など、挙げたらきりがない。
ちなみに、諭吉はくだんのツーショット写真を「他の日本人にマネされたくない」と、帰国船が米本土から立ち寄り先のハワイを出港するまで仲間に秘密にしていたという。
巻末には箱根宿の写真を掲載したコラム「幕末の残像・街道と宿場」があり、また、下関港に到着した連合艦隊、1865年ごろの長崎港、本丸御殿の一部も写った貴重な名古屋城、愛宕山から見た江戸のパノラマ(1863年)といった写真も載せている。
永久保存版の一冊。
単行本、207ページ。定価1680円。