「素材」にこだわる下着仕立てのおむつ
「ムーニーパンツ 下着仕立て」
1981年に国産初のベビー用紙おむつとして登場したユニ・チャームの「ムーニー」。テープ型の紙おむつからパンツ型へと形状の変化ばかりでなく、吸収力を高めた薄くても漏れない、むれない素材へと、紙おむつは日々進化している。
2010年6月に発売した「ムーニーパンツ 下着仕立て」は、赤ちゃんの気持ちに立って開発した、その名のとおり下着をはいているのと同じような伸縮性をもち、ゴムによる過度な締め付けをなくすよう考えられたおむつだ。
ゴムの締め付けは赤ちゃんにとって「ストレス」
おむつのはき心地が赤ちゃんにどのくらいのストレスを与えているのか――。ユニ・チャームの「ムーニーパンツ 下着仕立て」は、そんな「赤ちゃん目線」から開発に着手した。
岩手大学大学院工学研究科の山口昌樹教授との共同研究で、おむつの表面のやわらかさと、おむつの装着直後のストレスの関係を、世界で初めて検証。肌着に近いおむつをはいたときの赤ちゃんは、ほとんどストレスを感じていないことがわかった。
紙おむつはこれまで、家事や仕事に忙しく働く母親の、おむつ替えのストレスをやわらげようと取り組んできた。高分子吸収体を使って、「漏れない」「長時間安心」という母親のニーズを満たし、育児の負担からの解放と時間短縮をもたらした。
吸収力をアップすることで持ち歩きなどに便利な薄型タイプが開発され、その一方でおむつ離れを促すためのトレーニングパンツも用意した。
「下着仕立て」は、はき心地が布地に近くなるように、「素材」にこだわった。ギャザーのあとが残らず、肌が赤くならない。足を上げたり、立ったり座ったり、歩行の動作のときにかかりやすい、おむつの締め付け圧の解消にも取り組んだ。
「研究で、赤ちゃんは私たちが思っている以上にデリケートに物事を感じていることがわかりました。赤ちゃんの日常生活で、おむつはお母さんの次に影響が大きい存在です」と、山口教授は語る。
12年かかった素材開発
新商品の「ムーニーパンツ 下着仕立て」は、ユニ・チャームがじつに12年もの歳月をかけて開発した素材、「ソフトレッチ」を使っている。それによって、おむつに付きものの、おなか周りの糸ゴムをなくして、より布地のパンツをはくように、おむつを着けることができるようになった。
新開発の「ソフトレッチ」は、まさに「素材革命」である。生地の表面の凹凸が少なく、素材が肌に「面」でフィットすることで、肌への刺激を大幅に低減する。従来のような糸ゴムを使用しないのが特徴で、やわらかく、なめらかな肌ざわりを実現した。糸ゴムがなくてもずれたりしないのは、伸縮性に優れているためで、従来の伸縮性のない不織布素材と比較すると、ソフトレッチは素材そのものが2.2倍の伸縮性をもつ新素材となっている。そのため、寝返りやハイハイするとき、また赤ちゃんの成長にあわせて、からだにフィットするわけだ。
新素材について、ユニ・チャームは「極細の繊維状にするまで数年かかり、その1本の伸縮する繊維をシートにするのに数年。さらに赤ちゃんが使用できる伸縮レベルに仕上げるために数年を要した」としている。
そこから「パンツ型」にするのに、今度は「締め付けないのはいいが、はかせにくい」という課題を解決するため、「100を超える条件を組み合わせて、数えきれないくらいの試作品をつくった」という。
開発担当者は、「ふだんから、われわれがはく下着と同じようなものを、赤ちゃんにもはいてもらいたいと思っています。そのためには、もっと薄くてやわらかい吸収体で、もっと肌にやさしくこすれない素材が必要になります」と、さらなる改良へと意欲をみせる。