うつ病と睡眠障害に効く リュミノテラピーって何?

   秋から冬にかけて、気持ちの落ち込みがひどくなり、朝起きるのがつらかったり、集中力が低下したり・・、これは冬季うつ病と呼ばれる、れっきとした病気の症状だ。その治療に効果抜群とされる、リュミノテラピー(光療法)が、うつ病のみならず睡眠障害にも効果があり、と注目されている。

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一日30分、光を浴びると、うつ症状が改善


リュミノテラピーの治療室

   うつ病の原因の一つとして、癒しの感覚を生み出すと言われる脳内ホルモン、セラトニンの減少が挙げられるが、セラトニンは太陽光を浴びることによって生成されるので、日照時間の少ない冬場には不足がちになる。リュミノテラピーは、太陽光の代わりに専用の照射器の光を浴びることによって、冬季うつ病を克服する療法だ。

   パリのシャンゼリゼ近くにあるヨーロピアン・スリープ・センターeuropean sleep centerに診療ルームを持つ、光療法の第一人者ドクター・デュフォレズに話を伺った。

「毎冬、フランス人の約3%が冬季うつ病にかかり、また、病気と診断されなくても、気分の落ち込みを感じる人は15%に上ります」。

   確かに、フランスの夏は夜の10時頃まで空が明るいが、今の時期と、夕方の6時には真っ暗に。そのギャップから、冬季うつ病の発生率は日本より高そうだ。

「リュミノテラピーは、体から30~40 cm、視界45度の位置に専用器具を置き、一日30分、一万ルクスの光を浴びます。視界45度というのは、目が光をとらえ、その明るさによって脳がホルモンの分泌量を調整するので、目に十分な光が入ると同時にそれほど負担がかからない角度です」。

   センター内の治療室では、ベッドに横たわり、両側に置いてある器具から照射される光を浴びる。通うのが困難な患者は器具のレンタルができて、たいてい、使用し続けて3日後には症状の改善が見られるという。

体内時計の調整により、不眠改善効果も


ドクターのデスク上にも照射器具が

   また、このリュミノテラピー、睡眠障害にも効果がある。眠りを誘発する脳内ホルモンはメラトニンといい、こちらは、日光を浴びることにより生成され、夜暗くなると分泌が始まるしくみだ。不眠の一因として、生活リズムの乱れが指摘されているが、リュミノテラピーを効果的に取り入れることで、体内時計を調節し、睡眠障害の克服も可能だという。ドクターの元には、夜勤などタイムシフトのある仕事をしている人、時差の大きな国への出張が多いビジネスマンがよく相談に来るが、最近ではネットやゲームをして夜更かしが続き、睡眠障害に陥った子どもたちが、親に連れられて来るケースも多いのだとか。

   このリュミノテラピー、テレビ番組でも取り上げられ、知名度が高まり、健康グッズの店でも照射器具が手に入るようになった。知人のフランス人は、医師の勧めで、これをキッチンに置き、出勤前に朝食を取りながら、光を浴びるようにしたところ、仕事の集中力が高まり、寝つきがよくなったという。どうやら本当に効果があるらしい。ただ、光が多少、目に負担をかけるので、白内障など、目に疾患のある人は医師に相談してから使い始めた方がいいそうだ。

江草由香

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