「エースホテル」に散らばる クリエーター陣の「こだわり」
リーバイスのジーンズ、ドクターマーティンのブーツ、スピーワックのピーコートを着たベルボーイに迎えられるホテルが、マンハッタンに誕生。オレゴンからやって来たこの「ACE Hotel(エースホテル)」は、気になる要素が満載のホテルです。ちょっとのぞきに行ってきました。
高級ホテル「ブレズリンホテル」を改装
スピーワックのピーコートの下にはユニクロのカーディガンも
ブロードウェイと29丁目の交差点。地図でみると、マンハッタンのど真ん中でありながら、まわりには、安物のバッグや衣類を売る問屋が軒を連ね、それらを露天で販売するアフリカ人などが多くたむろっている、正直、ぱっとしないエリア。
「エリアより建物で選びました。」と、経営者のカルダーウッドさんがいうように、このホテルの建物は、かつての高級ホテル「ブレズリンホテル」を改装したものなのです。
確かに、このホテルの進出が決まった頃、「オレゴンから若造がやって来て、古きよき時代の建物を、おしゃれなブティックホテルに改装しくさる。ふん。」というような雰囲気があったことは確か。
でも、一度このホテルに足を踏み込むと、思わず「古い財産に、新しい息を吹き込み、生き返らせてくれて、ありがとう!」と、素人ながら感謝したい思いに駆られたのは事実でした。
この若い経営者を慕って集まってきたクリエーターらが、「自分達の好きな物」と、こだわって探し集めた物は、ユニフォームだけではありません。
部屋にある冷蔵庫は、レトロなデザインで有名なイタリアのSMEG社製。もちろん中には、メイド・イン・NYのブルックリン醸造所のビールもはいっています。
ミュージックホール社製の赤いおしゃれなターンテーブルがデスクに鎮座。そして、部屋にはギブソンのギターまでも。これらはインテリアの飾りではなく、宿泊中は、お客様のものなんだそうで使用可能。
ベッドにかかるブランケットは、アメリカの老舗ペンデルトン社製、洗濯物を出すバッグは、昔のアメリカの郵便袋を縫い直した物と、本当に、こだわりがたくさん、あるものみな欲しくなります。
まるで、ニューヨークの友達のアパートに踏み込んだような気分になるインテリアデザインは、ロビン・スタンドフォーとステファン・アレッシュ。元は映画のセットデザイナーなのだそう。
エースホテルの1号館はシアトルに
ロビーはラップトップを持ち込んでカフェがわりに使う人も
部屋はまるでニューヨーカーのアパートみたい
エースホテルの仕掛け人は、シアトル生まれのアレックス・カルダーウッド。
初めて手がけた仕事は、スポーツブランドのブランディングとマーケティング。今でもこの会社は稼動中で、ホテルのPRを受け持っています。取材の申し込みに対する応対も、気持ちがいいほど早い!
このカルダーウッドさん、人を引き寄せる才能があるらしく、ハリウッドのシャトーマーモントや、NYで話題のスタンダードホテルをてがけたホテル王アンドレ・バラージュに出会いルディズ・バーバー(床屋)のリニューアルとマネージメントを頼まれます。
こうして、どんどん事業を拡大し、99年にエースホテルの1号館をシアトルにオープン。NYは、その4軒目となります。
ホテルのスタッフと話していて感じたのは、ここで働けて幸せ。カルダーウッドさんの事を尊敬している。と、いうこと。経営者として、仲間を大事にして、意見を吸い上げるって、こうも大きな組織になると難しそうですが、カルダーウッドさんは、それを実現させているのですね。
ロビーはホテル客だけのものでなく、解放の空間にしたいそうで、現に、長いコミューナルテーブルでは、ラップトップを持ち込んで、コーヒーを飲みつつ、くつろぐ人々の姿がたくさん。旧ホテル名を冠したレストラン「ブレズリン」もロビーにオープン。しばらく話題をさらいそうです。
坂本真理