沖縄ユニット「シモブクレコード」 新譜に滲むブルース&フォーク


シモブクレコード
『Looking South West』
TECI-1252
2500円
6月3日発売
インペリアルレコード


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   今年の夏は、夏というイメージとは程遠いものだった。その代わり、エルニーニョ現象が長引き、残暑の厳しい秋口だとか……。こうした、ひょっとしたら地球規模での気候変動の端緒かもしれないと思わせる気候の異変は、遠の昔からあって、その都度庶民は右往左往してきた。ただ、最近の異変は、かなりはっきりと原因が特定されていて、結構なリアリティーを感じさせてくれる。

   ふと思い出したが、70年頃、世間では地球は気候変動のサイクルから言えば、これから寒くなるという説が一般的だったという記憶がある。当時活動していた劇団に「第四間氷期」というのがあって、これは、現在(70年当時)は次の氷河期に至るまでの間氷期に当たるという意味の劇団名だった記憶がある。当然50年代の終わりに書かれた阿部公房の同名小説に触発された劇団名だったのだろうが、それはそれとして、当時の一般的な認識は「これから寒くなる」だった。

   考えてみれば、わずか30年前には、温室効果ガスによる地球温暖化などという人為的な気候異変など、ほとんど誰も考えていなかった(ただし、阿部公房の「第四間氷期」の主たるモチーフが、実は温室効果ガスと火山の爆発による氷山の溶解で起こる大洪水である!もちろん一部の学者は、既に警鐘を鳴らしていたが)と言うことで、人間と言う存在の無頓着さに、背筋がちょいと寒くなる思い。

   それとはまったく無関係に、東京ではほとんど感じられなかった今年の夏に、結構聴きまくった音源がこれ。シモブクレコードの『Looking South West』。

   シモブクレコードは、アラフォー世代の下地勇&島袋優(BEGIN)の2人が組んだユニット。下地は宮古島出身で宮古の言葉で歌う異色のシンガー、島袋は石垣島出身のBEGINのギタリスト。この2人が組んで面白くないわけがない! 音楽は楽しい、楽しい音楽はもっと楽しい! そんな気分にさせてくれる1枚のCD。沖縄は当然大きなモチーフになっているが、それは空気のようなもので、それぞれの音はブルースだったり、フォークだったりする。ボブ・ディランの「LIKE A ROLLING STONE」などは出色の出来。

   いまさら……と言われそうだが、秋口は残暑厳しいそうで、これはそんな気候異変下で聴くにはもってこいの暑気払いCDだ!

                                              

 加藤 晋

【Looking South West  収録曲】
1.先島目線
2.Come back Jerry!!
3.周回遅れのランナー
4.Vitamin I
5.宇宙の空気
6.LIKE A ROLLING STONE
7.海に消えた老人
8.明日の風は明日吹く
9.AKICAN
10.おやすみのうた
11.しあわせのしわよせ
12.JOTO Steak(bonus track for JAPAN)

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