長寿のイメージばかり先行? 仏の「OKINAWAブーム」
日本同様に高齢化社会を迎え、健康への関心が高まるフランスでは、OKINAWAが静かなブームをよんでいる。テレビや雑誌で沖縄の特集が組まれ、沖縄本が何冊も出ているが、テーマのほとんどが長寿とダイエットである。ただ、フランス料理と折衷の沖縄料理が紹介されたり、沖縄産ではない食品がOKINAWAブランドとして販売されたり、とOKINAWA=健康・不老長寿のイメージだけが先行している観もある。
パリのシニア見本市にOKINAWAブースが登場
「沖縄ブランド」の食品
2年ほど前から沖縄を取り上げたテレビ番組を目にするようになった。"沖縄は百歳を超える高齢者人口が最多、しかも高齢者は働いたり、スポーツをしたり、と実に活動的"と元気な沖縄の老人たちの姿を映し出す。そして"不老長寿の秘密はその食生活にあり!"とゴーヤーや紅イモが並ぶ市場の風景、沖縄の食材を使った料理が紹介されるという具合だ。本は『沖縄ダイエット』、『沖縄レシピ』、『健康に生きるための沖縄プログラム』なんてタイトルが並ぶが、「沖縄に肥満と糖尿病は存在しない」、とまことしやかに書かれていたり、昆布のクレープとかイワシのタルタルステーキとか、フレンチテイストの加わったレシピが並んでいたり、と我ら日本人から見ると??なものもある。
先月末、パリでシニア見本市が開かれ、OKINAWAブースがあると聞き、訪ねてみた。介護用品、健康食品などのメーカー、介護施設、家庭菜園協会、退職者ボランティアクラブなど、シニアをターゲットにした200を超える企業・団体が出展する大きな見本市である。さて、沖縄ブースで展示即売されていたのは、フランスの健康食品会社ロリック・サンテ社によるOKINAWAブランドの抹茶(さんぴん茶やゴーヤー茶ではない)、19種のビタミン、ミネラル、アミノ酸の入ったダイエット・サプリ、ツバキ&なたね&オリーブの混合オイルの3点。と、どれも沖縄産の原料を使っているわけではなく、「沖縄との関係は?」と販売担当者につっこむと「でも、お茶はれっきとした日本産です!」とひるむ様子もない。抹茶はストレス解消に、オイルは心臓疾患に効果抜群、とセールストークをし、「2月の自然健康法見本市では、この3点セットが千個も売れたんですよ」と得意顔だ。OKINAWA=健康というイメージの勝利、と言ったところか。
この夏、いよいよフランスで売り出される沖縄(+京都)ツアー
フランスJTBのマチルド・ルモニエさん
沖縄ブースにはフランスJTBも参加。同社はブームを見込んで、この夏から沖縄ツアーの販売を開始する。パンフレットにはサンゴ礁と熱帯魚のトロピカルな写真に『日本パラダイス 沖縄 百歳代の人々が住む島』なんてタイトルが踊るが、2週間で京都・奈良、沖縄をめぐる内容だ。「OKINAWAが国の名前だと思っている人もいるので、まずは、日本の県だということを知ってもらわないと」。と担当のマチルド・ルモニエさん。「フランスでお年寄りと言えば、老人ホームなどで静かに暮らしている、というイメージがありますが、テレビに映し出される沖縄の老人たちはとてもアクティブ。何を食べて、どういう生活をしているのか?と関心をもつ人が増えています。首里城などの観光地やきれいな海もあるし、今後、フランスから沖縄への旅行者も増えていくでしょう」。沖縄に足を運び、現地の料理を食べて、フランス人に本当の沖縄を知っていただきたいものだ。
江草由香