「速さ」にゴマかされている? KDDI「ギガ得プラン」の問題点
KDDIは24日、光ファイバー回線のインターネット接続サービス「ひかりoneホーム」に、上下最大1Gbpsで通信できる「ギガ得プラン」を追加。10月1日に開始すると発表した。国内大手電気通信系の家庭向けサービスとしてはおそらく初の"ギガ"級であり、注目される新サービスである。
はたして、理論値1Gの現実はどれほどか
1Gbpsネットを可能にする機器「ギガホームゲートウェイ」。無線LAN機能も備える
21世紀ごろにはじまった「日本の全家庭にブロードバンドを」というネット接続高速化運動も、100Mbpsクラスの光ファイバー接続がそれなりに浸透した数年前から、踊り場に来て一休みの感があった。
そこに飛び込んできたのが「ギガ得プラン」の知らせだ。月額5460円(2年契約時)、現在の100Mbpsサービスとさほど変わらない料金で、接続スピードが理論上で10倍以上も速くなるというのだから、階段を一気に十段くらい駆け上がるような話である。十数年前には、20~30kのモデムでネットにアクセスし、写真を表示するのも一苦労な時代だったことを思うと、じつに高いところまで来たものだと感慨深い。
とはいえ、諸手を挙げて喜んでばかりもいられないのだ。まず気がかりなのは実効速度だ。50Mbps、100Mbps、とブロードバンド時代を迎えると、景気のいい数字(接続速度)が並ぶようになった。しかし、これらはインフレ気味の机上の理論値で、実態との乖離が目立ってきたのだ。ネット上のスピード計測サイトの集計などでは、50MbpsのADSLで20M、100Mbpsの光ファイバーで50Mも出ていれば良い方だ。また同じ接続スピードを謳っていても、プロバイダー/事業者によって、かなり差があるようだ。はたして理論値1Gの現実はどれくらいだろうか?
プロバイダーは、理論値だけでなく、平均値などの状況を公表するべきでは――と筆者は考えるのだが、総じて及び腰という印象だ。なかには、そうした情報を公開するところもあるが、大まかな統計だったりして、たいして参考にならない。実際の通信速度は、パソコンの性能やLANケーブルの長さや品質、電話局からの距離、妨害電波など、「お客様の環境」によって変わってくる(だから平均速度の統計に意味はない)。これがプロバイダー側の言い分のようだが、「公表しない理由」としては脆弱ではないだろうか。
使い放題、使いすぎれば規制される!?
KDDI直系の「au one net」の他、@nifty、BIGLOBEなどの提携プロバイダでも利用可能だ
問題といえば、常時接続ブロードバンド時代になって顕在化してきた現象がある。一部のユーザーが占有的に大量の通信をするせいで、ネットワーク全体が圧迫されてしまうのだ。こうした"一人占め"ユーザーを規制するために、すでに多くのプロバイダーが対策を取っている。月単位などで一定の通信量を超えたら、速度に制限をかけるなど、さまざまな方法があり、これもプロバイダー、サービスごとにバラバラの対応である。
当分はヘビーユーザーがメインとなるだろう「ギガ得プラン」では、この問題が一層シビアになることも予想されるが、CNET Japanの記事には、こうある。
「連続的かつ大量の通信をご利用される一部のお客さまについて、ネットワーク資源の品質、公平性確保を目的とした通信利用の制限を実施する場合があります」(KDDI)とし、通信状況によっては速度規制する可能性も示唆している。
どうにも曖昧な答えである。あらかじめルールを明確にしたほうが安心して利用できるとの考え方もあるだろうが、「運用しながら、様子を見ながら」という方針なのだろうか。
これ以上速くなっても、と冷めた声も聞くが…
さて、ここまで問題点を挙げてきたが、このサービスの一番の課題はマジョリティ・ユーザーにどうアピールするか、なのかもしれない。筆者の周りでは「ADSLから光ファイバーに変えたけど違いがわからない」「もうネットの速度は必要十分。ギガだから何なの!?」と冷ややかな意見が多く、あまり関心が見られなかった。
それでも、インターネット回線進化の先には、まだ多くの可能性がありそうだと筆者は思う。今までのブロードバンドにしても、懐疑論が多く聞かれたが、結果的に音楽や動画サービスを花開かせてきた。ギガ級、それ以上の接続速度が、新たに何も産まないとは言い切れないだろう。もっとも、それがいつなのかはわからないし、ユーザーとしては現実にそのときが来たら乗り換えればいいだけの話であるが――。