世界中タダで無線LANネット 「FON」のウマい話はどこまで本当か

   ミニノートPCにスマートフォン、携帯ゲーム機――。無線LAN(WiFi)機能をそなえた機器が身の回りに増えつつある。家庭用の無線LANルーターや外出先で使える無線LAN接続サービスがあらためて注目を集めているが、そんななかでもひときわ目を引くのが、世界中無料でネット接続ができると謳う「FON」だ。

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家庭内では、簡単、手軽で安価な無線LANルーター


FONの専用ルーターは手の平に載る小型サイズ。写真は「La Fonera+」

   公式サイトのキャッチフレーズは「世界で最も巨大なWiFiコミュニティー」。8月には世界の会員数が100万人を突破したというFONの仕組みを簡単に説明すると、自宅などに設置した無線LANルーター(アクセスポイント/AP)を他のFON会員に解放して接続させるかわりに、自分も外出先で他の会員のルーターを無料で利用できるというもの。会員内で無線アクセスポイントを共有するというアイデアである。FONは世界規模で展開しているため、「世界中で無料ネット接続」と宣伝しているわけだ。

   家庭内と外出先の無線LAN接続が一石二鳥――。本当なら夢のような話だが、そこにはいくつかの条件がある。まずルーターを設置する自宅に常時ネット接続環境があることが前提で、それらは大抵有料だ。加えて専用ルーターの「La Fonera」が必要になる。これはウマい話の大きな落とし穴のようである。モデルの仕事を斡旋すると言いながら、高額な登録料を巻き上げる類かと警戒したくなるが、そう心配することもない。La Foneraは1980円と安価(有線LAN用のイーサーネットポートを持つLa Fonera+は2980円)で、規格は現在一般的なIEEE802.11b/gだから、多くの携帯機器で使える。なお、La Foneraはネット上のほか、一部の大手家電量販店店舗でも購入できる。

   手持ちのインターネットルーター/モデムにつなぐだけで、とくに複雑な設定も不要。家庭内で簡単、手軽、安価で必要にして十分な無線LANルーター/APとして使えるのである。

外出時のアクセスは、個人の善意が頼みとなる


パリ凱旋門周辺にも多数のAPがある。実際に接続できるかは別問題

   それでは、FONを外出時の無線LANサービスとして使うときに、BBモバイルポイントやフレッツ・スポットといったサービスと比較して、どんな違いがあるだろうか。

   これらの有料サービスは、たとえば商業施設などのランドマーク的な場所を中心に展開している。「マクドナルド○○店」「○○駅改札付近」にAPが設置されていて、そこに行けばネット接続ができるし、万が一使えなければ苦情を入れるぐらいは可能である。

   一方、FONは個人の善意の集合体であり、APは自分を含めた各ユーザーの自宅などである。数字上は日本国内に約45000、世界で約30万のAPがあることになっているが、その場所を知るのには、ユーザーがルーターの設置場所を自己申告で登録したネット地図「FON Maps」が、ほとんど唯一の手がかりだ。なかには正確な位置を登録していなかったり、ルーターの電源を切っているケースもありえる。フォン・ジャパン株式会社も、FON Maps上のAPの位置は「正確さを保障するものではない」としており、責任を負わないのである。

   また、ルーターの電波は理論上50m届くと公式サイトで説明されているが、障害物などによってその距離は大きく減じる。豪邸の中心にLa Foneraが設置されていたら、壁の外側からいくらアクセスを試みても、おそらく徒労に終わるだろう。

   いざ外で使おうとすると、本当に接続できるかわからない不安がFONにはつきまとうのだ。

夢のような話ではないが、家庭内の無線LANとして損はしない

   こうした問題に対して、たとえばユーザーがFON Maps上のAPの接続しやすさを評価できる仕組みなどがあれば、接続精度は向上していくだろう。もっとも、FONが目指す最終地点では、わざわざネット地図上でAPを検索するといったケチ臭い作業自体、不要になるはずだ。La Foneraが無線ルーター界の"Windows"と化して、世界中に嫌がられるほど行き渡り、会員数は数十億人となって、どこでもネットにつながるはずである。

   もちろん、それは将来の夢のようなお話。ただ今の現実に立ち返ると、「外」ではやや頼りないFONだが、家庭「内」では無線LANルーター機器として使用でき、ほぼ必要十分な性能で、他の市販品とくらべて割安である。外出時の(使えるか使えないのか不安な)FONアクセスポイントをオマケと考えるなら、ミニノートPCやスマートフォン、携帯ゲーム機などを活用するために、これから気軽に家庭内無線LANをはじめようというユーザーにとって――夢のような話とまでは言えないにしても――けっして損のない話ではないだろうか。

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