懐かし「8ミリ映写機」復活 手回しハンドルで映像動かす

   かつて家庭用の映像記録メディアとして一世を風靡した「8ミリフィルム」。いまではビデオやDVDに取って代わられ、映写機もほとんど販売されていない。しかし2008年春、学研の人気シリーズ「大人の科学」から「8ミリ映写機」が発売された。デジタル機器全盛のいま、なぜ8ミリ映写機なのか?

Read more...

7980円で楽しめる「大人の玩具」


レトロ感いっぱいの学研「8ミリ映写機」

   学研が2008年3月に発売した8ミリ映写機は、幅21cm、高さ20cmほどの小型の映写機だ。リール部分に8ミリフィルムをセットして、ハンドルを手で回す。すると、フィルムが白色LEDライトの光源を受けて、映像が映し出される仕組みだ。

   専用パーツをとりかえることで、「シングル8」「ダブル8」といった複数のフィルム規格にも対応できるように工夫した。主にインターネットを中心に販売中で、価格は7980円。

   個人のブログには、この8ミリ映写機を使ってみたという感想が紹介されているが、なかなか好評のようだ。

「1灯なので明るさが気になりますが、暗い場所で使えば問題なし。(中略)デジタル全盛のこの世の中で、手回しハンドルで映像が動くのを見るとかなり感動がありますよ」
「あまりにちゃちな作りだったので不安になりましたが、なんのその!!立派に映りますよ!!乾電池だから場所を選ばないし、手回しがまた良い!!」

   いまではデジタルビデオカメラがあるが、昔の映像マニアは「8ミリフィルム」のカメラで撮影し、専用の映写機で観賞していた。8ミリフィルムは1930年代頃から使われはじめ、70年代にピークをむかえたが、80年代に入るとより手軽なビデオテープが普及したことで下火になってしまった。現在では、ほとんどの機材の製造は中止されている。

読者のリクエスト「ぜひ8ミリ映写機を!」


幅広い世代から好評だった「紙フィルム映写機」

   デジタルカメラ全盛の時代にどうしてこのようなアナログ製品をつくったのだろう。学研で「大人の科学」シリーズの開発に関わる前田保典さんは、

「以前発売した『紙フィルム映写機』がそもそものきっかけです。その際、読者の方々から『次はぜひ8ミリ映写機を!』というリクエストがあったんです」

と明かす。紙フィルム映写機は、紙で作ったフィルムを映写する簡易な装置。「8ミリフィルム」の"紙"バージョンのようなもので、8ミリ映写機の1年前に発売された。

「付録には『鉄腕アトム』や『のらくろ』の紙フィルムをつけたんですが、若い人は自分でイラストを描いたり、写真をプリントしたものを使ったりして遊んでいたみたいです。特に30代前後の若い女性に人気がありました」

   一方、今から40年ほど前に「8ミリ」に親しんでいた60~70代の人たちや、子供のころに映像を見た記憶のあるその下の世代にとっては、「懐かしいな」という気持ちが強かった。そして、「8ミリ映写機」を熱烈にリクエストする理由には、以下のような事情があった。

「昔の『8ミリ映写機』は壊れやすかったんです。特に電球の寿命が短く、数十時間で切れてしまうという場合もありました。また、フィルムを動かすベルトも切れやすかった。ですので、フィルムは捨てられずに持っていても、映写できる装置はほとんどなくなっている、ということがわかったんです」

若い人たちには「不便さも込みで楽しんで」ほしい


開発中の「8ミリカメラ」。現在、試行錯誤を繰り返している

   以上のような要望にこたえるべく、「大人の科学」版の8ミリ映写機が発売された。映写機に続いて、「8ミリカメラ」も製作中だが、レンズの調整が難しく、光漏れを防ぐことに四苦八苦しているという。価格は、1万円前後になる見込み。2009年の春を目標に発売したい考えだ。

   「8ミリカメラ」で自分を撮ってもらった記憶があるという学研の前田さんは、8ミリの面白さを次のようにアピールする。

「今の時代すべてがオートじゃないですか。すべてマニュアルの機械がどこまで受け入れられるのか――少し不安でもあります。ですが、若い人にとっては新鮮な映像の世界になると思います。その不便さも込みで楽しんでいただければと思います」

注目情報

PR
追悼