まさかのブレーク「ドアラ」 人気の「秘密」探ってみた
つぶらな瞳に大きなブルーの耳。ちょっと垂れ下がった愛らしい眉毛には哀愁も漂っている――プロ野球中日ドラゴンズのマスコットキャラクター・ドアラが人気だ。初の自著『ドアラのひみつ』は売れに売れ、写真集発売、CDデビューと精力的に活動中だ。その素性は――意外にも「苦労コアラ」だった。
初版7000部の予定が「12万部発行」へ
「キモかわいい」と人気急上昇中のドアラ。自著『ドアラのひみつ』は12万部発行
ドアラは、1994年から中日ドラゴンズのマスコットを務めているコアラのようなキャラクター。頭はコアラ、体には手足があるので、どちらかといえば“ヒト”に近い“半人半コアラ”だ。
初の自著『ドアラのひみつ かくさしゃかいにまけないよ』(PHP研究所/1050円)は2008年3月に発売された。当初初版の予定は7000部だったが、インターネット予約の段階で7000部があっさり完売。そこで、急遽、10倍にあたる7万部の発行に変更された。その後、増刷も決定し、12万部が世に出回ることになった(2008年5月19日現在)。
ドアラのメディア進出はこれだけにとどまらない。5月26日には中日新聞社の撮りおろしによる『公式ドアラ写真集 ドアラ☆チック』が発売されるし、7月23日には“DJドアラ”としてCDデビューすることも決定している。
一時はリストラの危機に……
公式写真集『ドアラ☆チック』も発売することになった
今でこそ人気急上昇のドアラだが、意外にも“苦労コアラ”だ。一時は、リストラの危機に見舞われたこともあった。
ドラゴンズの本拠地がナゴヤ球場からナゴヤドームに移転した1997年、竜をモチーフにした新キャラクター・シャオロンが登場。新マスコットの登場にドアラのポジションは苦しいものになってしまう。
だが、連続バク転への挑戦や人懐っこく選手に接する姿がファンの心をつかんだ。さらに、ドアラのコミカルな動きが「変な動きをする!」と注目され、2007年夏ごろから動画投稿サイトに頻繁に登場するようになった。
ドアラのよき理解者でもある中日ドラゴンズ広報の石黒哲男さんは「特に注目されたのはここ1年くらい」と話す。セ・パ交流戦が始まったことや、ドラゴンズが日本一になったことで露出が増えたことも要因の一つだが、「ドアラの努力です」とプッシュする。
『ドアラのひみつ』は、ドアラが質問に回答していくという構成のエッセイ集。人柄ならぬ“コアラ柄”のよくわかる、こんなQ&Aがあった。
「ドアラ、スレンダーな体ですね? どうやって鍛えたの?」
「ホーム球場が変わったときも相当しぼられました。
なんせ『鍛えないとドームに連れていかない』って言われるし。
捨てられたくないので、もう死ぬ気で頑張りました」
ちょっぴり悲哀のこもった、独特の雰囲気をもつコメント。ちなみに、性格は「マイナス思考」で、お腹は弱く、「いつもプレッシャーに負けてしまう」と自己紹介している。
「へんに人間くさい」部分が魅力
「もともとドアラは一部ファンの間で熱狂的に支持されているキャラクターでした。しかし、ここへきてその人気が顕在化したのでは?」
そう話すのは、『ドアラのひみつ』を発行するPHP研究所の編集担当者、太田智一さんだ。人気の秘密を次のように分析する。
「格差社会を心配したり、老後を不安に思ったりと、へんに人間くさいところが魅力なのではないでしょうか。キャラクターがそんなことをいう“ギャップ”が面白いのでしょう。特に20代、30代女性に大人気です。ただ、子どもにはあんまり人気がありません。頭が大きいから、ちょっぴりこわいのかな」
また、ドラゴンズ広報の石黒さんはドアラ人気の高まりで多くのオファーがきていると明かす。日程の調整に奔走する毎日だが、「オファーはお断りしないで、どんどん挑戦していきたい」と意欲を見せる。すべてはファンに喜んでもらうためだ、と。
「やれることは全部やらせます。本人はきつい、休みほしい、とぼやいていますが……」