マイクロソフトが50億円で買った「極悪」ゲームソフト「GTA」
世界中で累計数千万本を売り上げた米国の人気ビデオゲーム「Grand Theft Auto」(グランド・セフト・オート、GTA)シリーズの最新作「Grand Theft Auto IV」が2008年4月29日、発売される。日本国内では、カプコンが08年内に日本語版を発売する予定だ。
米国Rockstar Gamesが開発するGTAシリーズでは、欧米の都市を主な舞台に、ギャングやマフィアといった犯罪者の生活が謳歌できるのが特徴となっている。この仮想世界は犯罪に寛容で、手当たり次第に自動車を盗み(なぜかほとんどの車のドアはロックされていない)、道行く人々を殴り殺しても、間抜けな警官が追いかけてくる程度。暗殺や強盗、詐欺などの“仕事”をクリアしながら、ストーリーは進んでいく。
「暴力性」「残虐性」ばかりが脚光を浴びるが…
「GTA IV」のPS3版パッケージ。北米での実売価格は約60ドル
法秩序を軽視した暴力ゲーム。血が飛び散り、首が飛ぶといった残虐なビジュアル表現もある――となると、当然のことながら多方面から問題視され、同シリーズはなにかと物議を醸している。国内では、シリーズの一部は18歳未満の購入が禁止となり、神奈川県では有害図書に指定。いわば札付き、お墨付きのゲームソフトなのである。
ゲームの舞台が外国で、登場人物も英語を喋る(日本語版では字幕)といった輸入ゲームのハンディのせいか、国産の有名シリーズにくらべると、GTAの国内販売数は少なく、際だった存在感はない。そうしたなかでは、「暴力性」「残虐性」ばかりが脚光を浴び、批判が突出しているような印象さえある。
「Postal」など、GTA以上に“過激”とされるゲームもあるが、それらはGTAほどの人気は得ていない。ならば、GTAには何かほかの魅力もありそうだが、なかなかそうした面まで光が当たらない。過激か否か、それは是か非かといった議論になりがちで、ゲームとしての総合的な評価があまり語られないのは残念だ。
マイクロソフトが50億円で「独占」したもの
Xbox 360版のGTA IVでは、独占の追加コンテンツが配信される
元来GTAシリーズは、PlayStation(プレイステーション)1/2など、主にソニーのゲーム機向けに販売されてきたが、最新作の「GTA IV」はPlayStation 3 とマイクロソフトのXbox 360の2機種で同時発売される(国内も同様)。初回出荷数は次世代機ソフトでは過去最高の約800万本で、次世代ゲーム機の普及を牽引すると見られている。世界的に見れば、今年の最注目ゲームソフトといっても過言ではない。
さて、この重要作品のラインナップに力を入れていたのが、家庭用ゲーム機界でも懲りずに巨人を目指し続けるマイクロソフト。一説によれば、当初タイトルの独占販売を目論んだものの、叶わなかったMSは一計を案じたという。開発元のRockstar Gamesの親会社にあたるTake-Two Interactiveに5千万ドル(約50億円)を払い、あるものを手に入れたそうだ。
それはXbox 360版GTA IV独占の追加コンテンツ2本。GTA IVの所有者に対して、新たなシナリオなどを含むコンテンツをネット経由で有料配信するもので、コンテンツそれぞれがゲーム1本分にも相当する質とボリュームと噂されている。1本目の配信開始は8月の予定で、現在のところ価格等の詳細は不明だ。
50億円でXbox版のGTA IVに付加価値をつける権利を手に入れた格好のマイクロソフト。高い買い物になるか、安い買い物になるか。それはともかくとして、この「極悪」ソフトに惚れ込んでるのが、血と暴力を求めるゲーマーだけではないのはたしかである。