横行する「ネットダフ屋」は「エージェント2.0」なのか?
2008年3月28日から3日間、X JAPANが東京ドームで公演を行う。約20年前に絶大な人気を誇ったロックバンドの再結成は話題を呼び、15万枚のコンサートチケットは1月下旬の販売開始直後に完売してしまったという。
ところが、そんなプラチナチケットが簡単に手に入る場所がある。ネットオークション検索サイトのaucfan.comで検索してみると、Yahoo!オークションでX JAPANのチケットが最近30日間に4000件以上も落札されていることがわかる。出品数はその数倍以上になるだろう。
すべてのプレミアムなモノが投機の対象になった
転売の売り手買い手はヤフオクに一同に介する
スポーツイベント、ゲーム機、稀少なブランド焼酎――あらゆる「完売品」がネットオークション、とりわけヤフオク市場に氾濫している。ネットのおかげで、誰でも自由にモノを売買できる環境が整うと、そこでモノを転売して儲ける行為もブレイクした。いまではすべてのプレミアム商品が投機の対象であり、転売屋が幅をきかせている。
X JAPANの例では、定価約1万3000円のチケットが、"完売"直後には4~5倍もの価格で取引されるなどしていた。今回、主催者側はダフ屋行為を抑制するため、チケット実券の送付を遅らせ、公演直前の約1週間にするという対策を取っていた。実際のチケットが出品者の手元になく、座席も不明な状態では落札しづらいからだ。それでも、ヤフオクの取引状況をみれば、十分な抑止力とはなっていない。
ネットダフ屋のおかげで需給調整!?
aucfan.comなどでのサイトで「相場」がわかる
ネットの音楽系掲示板では、コンサートが近づくと、しばしばネットダフ屋(ダフオクなどとも呼ばれる)をめぐって激しいやりとりが交わされる。
転売目的でのチケット購入と公共の場所での販売は地方条例で禁じられている、本当に必要な人にチケットが渡らない、転売でイージーマネーを得ているなどの批判がある一方、"悪者"視する必要はないという意見もある。
その理由のひとつとして、ネットのチケット売買では、売り手買い手がヤフオクに一同に介しているため、相場が明確で、売り手間の競争も生じるという点が挙げられる。むしろ、ネットダフ屋のおかげで需給がうまく調整される――と、その役割を積極的に評価する向きもある。
たとえば、たいていのコンサートなどでは、席種の区別はせいぜい2、3種類だ。席(場所)は、ほぼ抽選のような形で決まる。同じお金を払っても、一人はTOSHIの目の前にいて、もう一人は前の観客の頭しか見えないといった事態が起こりえるのだ。
いくらカネを払っても良い席でみたい人もいれば、値段が安ければ悪い席でも構わない人もいる。ネットオークションでは、ステージがみづらい、いわゆる"悪席"は公演が近づくにつれて価格が暴落していく傾向がある。X JAPANの場合も、チケットが届きはじめ、座席の位置が判明すると、悪席は定価の数分の一で取引されるようになった。ダフ屋にもリスクがあり、必ずしも儲かるとは限らないわけだ。
こうして見ると、ダフオク屋は万人参加のネット時代ならではの「代理店」、いわばエージェント2.0だと言えなくもない。「みんな」の自由競争市場で売買して、なにが悪いのか――。
ネットダフ屋から買うべきか、買わざるべきか?
いまのところ、公演の主催者や多くのアーティストには、ダフオク屋の存在を認める気配はない。また、そうした意向を尊重して、オークションではチケットを買うべきではない、との主張もある。それがダフオク撲滅への道なのだから。
さて、買うべきか、買わざるべきか。筆者自身、割り切れない思いはあるが、結局のところ、ほかに選択肢はないのだ。