原子模型みたいな「肘掛け椅子」 驚き伝えるNYのギャラリー
ニューヨークのギャラリー「phurniture(ファーニチャー)」はユニークなインテリアを扱っていて、海外のインテリア雑誌を見ていると時々出会う。ここに紹介する写真もそのひとつだ。
原子模型のような肘掛け椅子
「Fauteuil Chair, 2007」(肘掛け椅子)
「Fauteuil Chair, 2007」(肘掛け椅子)は段ボールで作ったプロトタイプ。生産する時にはアルミ製になるそうだ。原子模型を見ているようだが、よく見れば、クラシックな椅子を原型にしていることがわかる。デザインしたのはAranda/Laschとクレジットされている。建築家のベンジャミン・アランダとクリス・ラッシュの2人組だ。
僕がこの椅子を面白いと思ってブログに取り上げておいたら、このギャラリー、phurnitureを運営しているポール・ジョンソン氏自身の目に届いたようで、伝言のようにご本人からの感謝の言葉が届いた。そして氏が運営しているもうひとつのギャラリー、ジョンソン・トレーディング・ギャラリーもよろしくとのこと。ウェブの情報はどこをどう回るものかまったくわからない。私とジョンソン氏の間も現状まで付き合いはないが、ここで紹介することでつながってしまうかもしれない。
そしてジョンソン・トレーディング・ギャラリーのサイトを覗いてみると、ここにも面白いインテリアがたくさんあった。そしてジョンソン氏の選択眼が実に柔軟なのに驚いた。ここで気づいたのだが、ここにある作品は簡単にデザインだ、と割り切れないものばかりなのだ。
デザイン、アート、クラフトが融合を始めた
「Riddled Cabinet, 2005」(謎めいたキャビネット)
例えば、「Riddled Cabinet, 2005」(謎めいたキャビネット)と名付けられた作品がある。Steven Holl Architectsとクレジットされている。ベニヤ部分の穴も含め、これはコンピューター上で仕組んだものだろう。実際の製作はイタリアで行われている。クラフトの要素があったり、アートの要素があったりもする。その上で量産もある程度可能なことがわかる。デザイン、アート、クラフトと、別物として僕たちは普段くくっているが、21世紀になって改めてそれが融合し始めたのではないだろうか。
その萌芽は20世紀末には生まれていたと思う。僕の友人のデザイナー、マーク・ニューソンのインテリアがそのいい例だろう。フランク・ゲイリーの建築もそうだ。3次元的な曲面が生み出す豊かさは昔から理解されていたものの、強度計算が大変なことから敬遠されていた。それをコンピューターが可能にし、実現できるようになったわけだ。
自由になったところで、曲面や複雑な形状、自然素材の利用など、様々な手法が持ち込まれるようになる。コンピューターはその複雑なデータをそのまま製作現場で再現できる。現状はインテリアや建築に限られているように見えるが、どうだろうか、家電製品や文具、僕たちの暮らしの日常にさらにアートやクラフトに近いプロダクトがやってくる日はそう遠くないかもしれない。