低価格PCの「ソーテック」が消滅 買収したのはデジタル狂の音響メーカー
デジタル業界の栄枯盛衰を感じさせるニュースが入ってきた。約10年前、アップルのディスプレイ一体型PC「iMac」によく似たデザインの「e-one」を発売する大胆な試みや、低価格ダイレクト販売などで話題を振りまいたメーカー「ソーテック」が消滅するというのだ。
「デジタルと音楽の融合」に邁進するオンキヨー
最新モデルの「APX-2(H)」は一部家電量販店などでも目にする。実売25万円
2007年8月に、音響機器メーカーのオンキヨーがソーテックを子会社化していたが、08年9月1日で吸収合併することが決まったもの。なお「SOTEC」ブランドのPC販売は継続するという。
パソコンのマルチメディア化や、小型・低価格のデジタルオーディオ機器の普及が進んだ結果、重厚長大な音響機器やそれらを作るメーカーは一気にオールドウェーブに追いやられ、苦戦を強いられている感がある。その音響メーカーが元凶のPCメーカーを飲み込む格好となったのが、おもしろいところだ。
ただし、オンキヨーはその名に反して、ただの音響メーカーではない。パソコンユーザーにはパソコン用のサウンド機器やスピーカーでおなじみだが、じつはオーディオを聞くためのパソコンまでつくり、「デジタルと音楽の融合」に邁進しているのだ。今回はそんな知られざるオンキヨーPCに迫ってみたい。
音響機器メーカーの「一体型」パソコン
オンキヨー、そしておそらく国内音響機器メーカー初の量産パソコンは06年に発売した「HDC-7(N)」だ。OSはWindowsXP Media Center Editionを搭載し、横幅、奥行きがそれぞれ約40cmという大型、ゴールドの筐体が目を引く。パソコンが生じる騒音や震動を抑えるため、オーディオで培った技術を盛り込んだり、同社製の高音質サウンドボードなどが搭載されているのが特徴だ。
07年にはコンポ「INTEC 205」シリーズにデザインや大きさを合わせたコンパクトな「HDC-1.0(S) 」が登場。「INTEC 205」のアンプをベース一部改良したアンプと組み合わせた「APX-1(S) 」も販売された。OSはWindows Vistaの Home Basicになった。
上記の二つのモデルでは、音楽を収録したパソコンとそれを再生するためのアンプは別(セパレート)だった。言い換えると、オーディオ用に工夫はされているとはいえ、「ただのパソコン」だったのだ。
それが08年2月下旬に発売された最新モデル「APX-2(H) 」では、ついにパソコンとアンプが同一の筐体内に収まる「一体型」モデルに進化。OSもWindows Vistaの Home Premiumにグレードアップした。
何かと何かを合わせるか、それとも別にするか――はいつでも悩ましい。たとえば携帯電話とワンセグテレビが合体すると、便利なようだが、テレビでバッテリーを食い、電話に支障がでたりする。その意味では、パソコンとアンプの合体も一長一短に思えるが、オンキヨー「デジタルと音楽の融合」を謳う以上、「一体型」のラインナップは必要だっただろう。ここに至って、オンキヨーPCはひとつの完成型を見たと言えそうだ。
製品だけじゃなく、会社同士も融合させた
「e-onkyo music」はクラシック、ジャズ、演歌を中心にWMA形式で販売する
オンキヨーは「e-onkyo music」http://music.e-onkyo.com/で独自のネット音楽配信も手がけている。現在、音楽の録音機器は24bit/96kHz以上の高音質が標準的だが、CDで発売する際は規格(16bit/44.1kHz)に合わせるため、音質を下げざるをえない。そのギャップに目をつけたオンキョーは24/96の音楽配信を立ち上げたのだ。
川上から川下まで一貫して独自のデジタル路線を突き進むオンキヨー。ほとんどデジタル狂の感すらある。そして製品の「融合」「合体」には飽き足らず、パソコンと音楽の会社同士も融合させてしまったのだ。
今のところ、趣味性の高いオンキヨーブランドのパソコンはユニークではあっても値段も高く、デジタルマニアに浸透しているとは言いがたい。低価格で鳴らしたソーテックとの合体から、どんなメリットが生まれるのか注目だ。