お墓参りも「ネット」の時代 携帯サイトで故人を偲ぶ
彼岸の中日となる3月20日。休日を利用してお墓参りに出かける人も多いのではないだろうか。しかし最近は「QRコードのついたお墓」や「ネット上のお墓」など、従来の常識を覆す「お墓」が続々登場している。
「QRコードつきのお墓」が登場
墓石の扉を開けると「QRコード」が見える
2008年4月1日に発売されるのは、現代のIT技術を利用した「QRコード付きの墓石」だ。山梨県甲府市の墓石メーカー「石の声」が製造・販売する。
同社はこれまで、鏡の反射を使って納骨室内を見ることができる墓石「供養の窓」シリーズを展開してきたが、その「墓内部を覗く扉」の内側にQRコードを貼り付けた。納骨室内を覗けるだけでも驚きだが、さらに新しい工夫が加えられたのだ。
QRコードには専用のインターネットサイトのURL(アドレス)情報が入っており、携帯電話で読み取ってアクセスすると、故人の画像などを見られるようになっている。QRコードを製作しているIT DeSign社の協力を受け、「QRコード付きのお墓」を実現させた。
販売価格は、敷地1平方メートル程度の墓で100万円程度の見込み。石の声では「将来的には、墓地に行かなくても携帯電話で墓参りできるようにしたい」と、さらなる「お墓の進化」を探っている。
ネットでバーチャルな「お墓参り」
携帯電話を使うわけではないが、墓地に行かなくてもお墓参りできるサービス自体は、すでに登場している。アイキャン(東京都日野市)が展開している「ネットお墓参り」だ。
実際の墓石の写真や故人の戒名、生前の趣味などの情報を登録し、ネット上に「バーチャルなお墓」をたてる。墓石の写真を用意できない場合には、用意されている数種類のサンプルから選べる仕組み。別途オプションで、生前の歌声や会話など故人の「音声」も登録できる。
お墓がインターネット上にあるので、世界中からいつでもお参りできるのが特徴だ。本物のお墓参りのように、柄杓(ひしゃく)を使って墓石に水をかけたり、マウスを使って花や酒、線香などを供えたりできる。線香からは煙が立ち上り、さらにはお経をあげることもできるなど、かなり凝った仕様になっている。
気になる費用は、登録料が3150円(初年度のみ)で、年会費は2100円。今のところ、キャンペーン期間中で登録料・年会費ともに無料だ。2008年3月現在、200件近い登録があるという。
「最近では高齢化や核家族化が進んでいて、たとえば『東京に住んでいるので地方のお墓にお参りにいけない』といった方も多くいらっしゃいます。また、最近では散骨などをされてお墓がない方も増えていますが、そういった方のご利用もあるようです。お墓参りに行きたいけれど行けない方の心の慰みになれば……」
と同社の担当者は語る。
故人を偲びたいが実際にはお墓参りに行けない人をターゲットにしているとのことで、アメリカ留学中の孫娘が亡き祖父の命日に「お墓参り」したこともあったという。
お墓の悩みに答える「なんでも相談室」も
こうした流れに旧来の石屋さんを中心とする業界団体も対抗策を打ち出している。日本石材産業協会の杉本浄司事務局長は語る。
「お墓参りには、子供の情操教育や一族の集まる場を提供する、といった効果もあります。ただ、田舎の古くなったお墓を、今住んでいるところに移す『改葬問題』や、誰がお墓を継ぐのかという『承継問題』などはあります。昔であれば地元のお寺や親族などに相談できたのですが、最近では相談できるところがないというのも事実です。
日本石材産業協会では、4月に全国7か所の会場で『全国お墓なんでも相談室』を開催します。お墓や宗教について正しい知識を持っていると協会が認定した『お墓ディレクター(1級取得者)』がお墓の悩みにお答えしていきます」
お参りできるときには本物のお墓に行って、普段はネットで故人を偲ぶ――アナログとデジタルを融合させたこんなお墓参りが、将来は当たり前になるのかもしれない。