噂の「200ドルPC」ついに発売 買うべきかどうかは悩ましい
台湾のコンピューターメーカー、ASUS(アスース)の低価格モバイルPC「Eee PC」がついに2008年1月25日、国内で発売となった。この「Eee PC」(イーピーシーと読むらしい)は、もともと「200ドルPC」として構想され、大きな話題を呼んだ製品だ。
日本での発売価格は「4万9800円」
Eee PCのカラーは白と黒の二色があるが、黒のほうが人気がある
もっとも、「200ドル」は展示会出品の際の参考価格で、実際に市場に出たのは最安モデルで約300米ドル。それでもインパクトのある値段であり、香港で発売された際には購入者の列ができ、その様子が国内でも報道されていた。
今回の国内販売では、海外での上位グレード相当の一機種のみが発売。価格は4万9800円である。
発売前日の1月24日、いくつかの家電量販店を回ってみると、すべての店ですでに実機の展示を行っていた。特に力を入れていたのはBカメラ。店内のあちらこちらにEee PCの広告ノボリを立て、パソコンコーナーのみならず、建物1階の入り口にも白黒各1台ずつ、Eee PCを置いていた。
どの店でも、モバイル・ネット事業者の「イー・モバイル」のデータカードと組み合わせた展示がされている。なかには、イーピーシーの購入とイーモバ新規加入のセットで割引販売を行う店もあるようだ。
平日の夜で客足はまばらだったが、Eee PCの前には入れ替わり立ち替わり足を止め、操作する人の姿が見られた。モバイルPC売り場のなかでは、もっとも活況を呈しており、注目度の高さがうかがえた。
筆者の見た限りでは、初回出荷分を予約だけで完売した店はなかった。少なくとも1月25日からしばらくの間は、行列もせずに直接購入できそうだ。
実際に触ってみると、悪くない
7インチと小さい液晶画面。両脇がスピーカーになっている
メーカーの説明では、Eee PCは「モバイル・インターネット・デバイス」である。いわゆるノートPCに比べるとスペック的に劣るのを謙遜(あるいは言い訳)した呼称なのだろう。当初予定されていた名称には「PC」もなかったとも聞く。
記憶装置にSSD(ソリッド・ステート・ディスク)を採用したのはモバイルの「近未来型」として評価したいが、容量は4GB。出荷時状態で、ユーザーの可処分容量は1GB程度だ。OSにせっかくWindows XP(Home Edition)が搭載されていても、インストールできるアプリケーション、保存できるデータは限られてしまう。4GBのSDHCカードが付属するが、それでも十分とは言えないだろう。
バッテリーの駆動時間も公称3.2時間と短い。「真のモバイル・デバイス」「未来型」と言い切るには、いま一歩足りない感がある――。筆者の頭の中は、この商品の毀誉褒貶が渦巻いていたが、いざ実物をチェックすると好印象が強まった。Eee PCは、床の間に飾っておくのがふさわしい細身の"工芸品"ではなく、モバイルで使いたいと思わせる実用品であった。
筐体は頑丈。キーボードはピッチが狭く、慣れは必要になりそうだが、打ち心地自体は的確なレスポンスとストロークが得られ、悪くない。数十秒で起動するWindows XP Home Editionの動作も十分。7インチの液晶画面は予想以上に見やすい。USB×3にカードリーダーと、インターフェイスもこのサイズにしては豊富だ。
商品の旬としては、少し「熟れすぎ」!?
「Silverthorne」は、アップルのiPhoneに搭載されるとの噂も
日経パソコンの詳細レビューが結論づけてるように「安いモバイルパソコンを探していた人には最優先の選択肢」と思える。
しかし、「いま買うべきか」となると、かなり悩ましいところだ。というのも、Eee PCが最初にリリースされたのは07年の10月だ。国内発売は3か月遅れで、パソコンの発売サイクルからすると、ほとんど半周遅れのスタートなる。
したがって、国外では二代目Eee PCの具体像がもう明るみに出ている。4~6月に発売予定だという後継機は、インテルの低消費電力な新型CPU「Silverthorne」、および新型チップセットを採用し、液晶は8.9型に大型化。しかも、「販売は、当初から一部地域にとどめず、グローバルに展開する計画」というのは聞き逃せない情報だ。
もっとも、パソコンの「買い時」は難しい。ある新製品を待っていて、やっと発売されたら、今度はもっと魅力的な製品が出ることがわかった。その繰り返しで、これでは永遠に買えない――という笑い話もある。新CPUが、実際の製品では触れ込み通りのパフォーマンスを出さないのも珍しくない。ただ、少なくとも、Silverthorneが大きな期待を背負った"大物新人"なのは間違いない。
いまのEee PCは、魅力のある低価格モバイル(インターネット)PCだが、「真のモバイル・デバイス」と言うには半熟で、商品の旬としては少し熟れすぎ――。そんなところだろうか。