アナログからデジタルへ 「変化の時代」駆け抜けた「甲斐バンド」
ALL TIME BEST ALBUM
Kai Band StoryII(甲斐バンド・ストーリーII)
2007年12月12日発売/2800円/TOCT-26381
EMIミュージック
1980年代の前半、それまで塩ビ盤に溝を切って音を再生していたアナログのLP、EPに代わって、デジタルCDが音楽のストックメディアの主役に躍り出た。その主役交代劇は数年の間に行われ、90年までにアナログ盤はほぼ市場から姿を消した。それは劇的な変化だった。
アナログ音源は継続性を持ち、演奏や歌の、小説で言えば行間の空気感までも再現するものであり、CD登場の当初は、デジタル音源の特性である不連続性を危惧する意見もあったが、利便性と音の安定した再現性から、瞬く間にCDが取って代わった。
多くのミュージシャンは、その流れの中で右往左往した。その理由はデジタルに移行することで、音源の録音方法も大きく様変わりすることになったからだ。生音を拾い上げるスタジオライブ的な録音は影を潜め、徐々にPCを利用した打ち込みなどデジタル特有の録音方法が主流となったのだ。「その内、楽器なんていらなくなるな」というような声もあったくらいだ。
そしてその通りになった。今では極端に言えば、世界のあちこちで同時に別々のパートを録音した音が、次の日にはネットを通じてひとつの音源になり作品化されても別におかしくも不思議でもない時代になった。
そういう時代の変化を突き抜けて走り続けたバンドに甲斐バンドがある。このベストアルバムは元々79年に発売されたアナログの『Kai Band Story』。当時のヒットチャートNo1になったそのアルバムを持っている人は、比較できるものなら是非してみて欲しい。
『Kai Band StoryII』はただの焼き直しではない。デジタルの特性を最大限に活かし、REMIXし直して音質を飛躍的に向上させた、甲斐よしひろの労作(監修)。30年という時の流れをが瞬時に理解できる音源なのだ。ジャケットも当時を再現、これも楽しめる。
【KAI BAND STORYII 収録曲】
1.HERO ★
2.翼あるもの ★
3.氷のくちびる ★
4.きんぽうげ ★
5.安奈 ★
6.裏切りの街角 ★
7.ビューティフル・エネルギー ★
8.ホップコーンをほおばって ★
9.感触(タッチ)★
10.かりそめのスウィング ★
11.漂泊者(アウトロー)★
12.テレフォン・ノイローゼ ★
13.地下室のメロディー ★
14.BLUE LETTER
15.観覧車’82
16.ナイト・ウェイヴ
17.シーズン
18.破れたハートを売り物に
※★はREMIX曲